人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2013-6-7 7:40
 東京大学素粒子物理国際研究センターの山下了准教授による国際リニアコライダー(ILC)講演会が、21日午後1時半から市文化会館(Zホール)で開かれる。国内候補地が北上山地か九州・脊振山地のいずれかに絞られるまで2カ月を切った中、ILC実現に向けた機運をさらに盛り上げる。
 講演会は、ILCの北上山地誘致を提唱している一般社団法人国際経済政策調査会(東京都港区、高橋佑理事長)が主催する。同調査会は、20年ほど前から北上山地の強固な岩盤を素粒子研究施設に活用できないかという情報を察知し、組織内に「加速器科学研究会」を設置。ILCの話題が一般市民に知られていないころから、長年にわたり勉強会を重ねてきた。
 これまでに数多くの講演会を開催してきたが、81回目となる今回は山下准教授を講師に招く。演題は「ILC誘致実現に向けて」。ILC誘致の意義をあらためて一般市民に向け発信する。
 素粒子物理学の国際研究施設であるILCは、北上山地と九州の脊振山地が国内有力候補地とされている。米国やスイスなど海外にも候補地があったが、各国の経済情勢などを背景に日本への建設を有望視する声が浮上。7月の国内候補地一本化が、事実上の候補地決定になるとの見方がある。
 講演に関する問い合わせは、同調査会(電話03・6277・7467)。
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tanko 2013-6-5 9:50
 5月23日に茨城県東海村の「J―PARC」で発生した放射能漏れ事故と、北上山地への誘致が期待されている国際リニアコライダー(ILC)との関係について、東北大大学院理学研究科物理学専攻の佐貫智行准教授は4日、県議会の新産業創出調査特別委員会(郷右近浩委員長、委員11人)の会合の中で、施設や実験内容の違いについて説明。ILCにおいて同様の事故が起きる可能性は極めて低いとした。その上で「今回の事故で得た教訓は(ILCにも)生かしていく必要がある」と述べた。

 会合は、同委員会による県内調査の中で開かれた。一関市役所大東支所を会場に同委員会メンバーと奥州、一関両市の誘致担当者らとの質疑や意見交換が行われ、学識経験者として調査に同行した佐貫准教授も出席した。
 会合の中で久保孝喜氏(北上、社民党)は、「今回の事故はILC誘致に影響しないと思うが、リスク面をきちんと説明する姿勢が必要。『住民から聞かれませんでした』ではなく、市民が抱く漠然とした不安にも積極的に対応すべきではないか」と述べた。
 両市担当者らもリスク説明の重要性を認識。一関市の田代善久副市長は「行政の人間が『大丈夫だ』と言っても説得力がない。専門知識がある科学者による説明会のようなものが開ければ」と話した。
 佐貫准教授は「『加速器』と文字に書いてしまえば同じ装置に見られてしまうが、J―PARCの加速器とILCの加速器は全然違う」と説明。J―PARCの装置の場合、スイッチを止めてから放射線の影響が収まるまで数時間は、遮へい管理区域の中に入れないが、ILCの場合は切った直後から中に入れるぐらい放射線の影響は小さいという。
 J―PARCのような事故が起きる危険性はILCでは極めて低いというが、佐貫准教授は「想定外のトラブルというものが起きないためにも、事故の教訓は生かしていかなければいけない」と強調。また個人的見解とした上で「J―PARCの装置も、異常を察知して一度停止した。しかし、それを再び動かしてしまった。すぐに実験を再開したいという気持ちを抑えるべきだった」と話していた。
 このほか佐貫准教授は「『放射線』と『放射能』は全く意味が違う。もし(住民に向けて)説明する際はこの辺も十分に理解した上でお願いしたい」と述べた。
(児玉直人)
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tanko 2013-6-5 9:40
 県議会の新産業創出調査特別委員会は4日、国際リニアコライダー(ILC)国内有力候補地の北上山地を視察。地元奥州、一関両市の誘致活動の状況について聞き取りする中で、外部に向けた情報発信がまだ不足している点などの課題が浮き彫りとなり、今後の諸対応に反映させることを確認した。
 一行は江刺区伊手の阿原山高原展望台周辺からILCの建設が想定されているエリアを眺めたほか、一関市役所大東支所では奥州、一関両市からILC誘致に向けた各種取り組みについて報告を受けた。
 工藤勝子氏(遠野、自由民主クラブ)は外部へのPR方法に関して質問。学識経験者として同席した東北大学大学院の佐貫智行准教授は「地質の科学的評価はもちろん、1度の乗り換えで成田空港に行ける交通アクセスなどは十分なものだが、そのことを知らない人が非常に多い」と、東北の持つ良さが十分にアピールしきれていない点を指摘。特に、外国人向けの英語による情報提供が不足しているといい、「国内候補地一本化まで2カ月を切っている中ではあるが、情報発信は頑張ってほしい」と訴えた。
 郷右近浩委員長(奥州、希望・みらいフォーラム)は「誘致実現に向けまだ足りない部分があることを確認できた。とにかくできることからやっていきたい」と話していた。
写真=阿原山高原からILC建設想定エリアを眺める県議ら
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tanko 2013-6-2 8:40
 5月30日に都内で開かれた、国際リニアコライダー(ILC)関連のシンポジウムで東京大の山下了准教授が、ユニークな「たとえ話」をしてくれた。素粒子研究の対象は「元気」「勇気」「気持ち」「やる気」など、人の心情を表現する言葉に入る「気」みたいなものだという。「そういうものがあるのは分かっている。しかし、その正体は何なのか、謎の部分が多い」。素粒子研究もそれに似ているというのだ。
 過日、私はある音楽家を県内の小学校に案内した。児童たちと歌を歌ったが「いつも以上に声が出ていた」と、学校の先生は大喜び。子どもたちの気持ちを「何か」が高めてくれたのだろう。
 金子みすゞの「星とたんぽぽ」の一節ではないが、見えぬものの存在意義はとても大きい。
(児玉直人)
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tanko 2013-6-1 5:10
 国際リニアコライダー(ILC)の国内誘致要望活動のため都内を訪れていた、東北ILC推進協議会の幹部は31日、高エネルギー加速器研究機構(KEK)と日本原子力研究開発機構(JAEA)が共同運営する、茨城県東海村の大強度陽子加速器施設「J−PARC」内で発生した放射能漏れ事故について、誘致運動への影響は特にないとの見解を示した。
 同事故は5月23日、敷地内にある「ハドロン実験施設」で発生。KEKが担当する実験の最中に発生した。装置の誤作動により放射性物質が飛散。換気装置を作動させたために、屋外に放射性物質が排出された。これまでに、研究従事者ら34人の被ばくが確認されている。KEKとJAEAは、周辺環境や人体の健康に影響が出るレベルではないと発表している。
 事故施設で行われていた実験は、ILCで計画されているものとは異なる。しかし、事故報道の中で「加速器」「素粒子」といったILC計画にも出てくる用語が頻繁に登場している。
 要望活動終了後、取材に応じた東北ILC推進協の里見進東北大総長は「(誘致活動への影響は)ないと思う」との認識を示した。推進協として一般市民への説明の必要性については「まだそこまで考えてはいない」と述べた。
 宮城県の村井嘉浩知事は「ILCの実験は電子と陽電子の衝突であり、その際に放射線が出ることはない。今回の事故とは全く次元が違う」と説明。本県の達増拓也知事は「(事故を教訓に)安全性に対する、さらなる対策を強化してほしい」と要望した。

不安への説明 不十分
 東北ILC推進協の幹部は31日にかけ、都内でシンポジウムの開催や省庁要望などを繰り広げた。北九州地域も含め、有力候補地2カ所の誘致活動がヒートアップする中で起きたのが茨城県東海村のJ−PARC放射能漏れ事故だ。
 推進協幹部は、誘致に影響はないとの姿勢。だが、本県の誘致関係者の一人は、「加速器が『危険なもの』というイメージが浸透しかねない」と危機感を募らせる。
 KEKとJAEAの発表では、事故による健康的影響は低くいという。また、ILCで行われる実験とは内容が大きく異なる。しかしながら、専門知識がない一般住民、特にILC候補地周辺に住む人の中には、今回の事故を受け、多かれ少なかれ不安を募らせただろう。似たようなことを、福島第1原発事故後に多くの国民が経験したばかりだ。
 こうした不安要素に対しては、早い段階で積極的に丁寧な説明を始め、また、それを繰り返すことが大切だ。たとえ安全な事柄であっても――である。情報公開が求められる世の中にあって「臭いものにふた」のような姿勢は、余計に不安と不信感を招く。
 ところが、5月30日のシンポジウムでは今回の事故の話題を口にする登壇者は誰一人いなかった。31日の要望活動終了後、報道陣から推進協トップに対し質問があって初めて事故に対する見解や、誘致活動への支障の有無に言及した。
 東北の復興や地域再生、人材育成のためにILCを誘致しようと願うなら、市民が不安に思う事柄を積極的に調べ、見解を示すべきだろう。あのシンポジウムは、その絶好のチャンスであったはずだ。
 誘致活動の先頭に立つ自治体首長は、市民の暮らしや命を守る立場にある。シンポジウムの中で、前岩手県知事の増田寛也氏は「一人一人の国民の理解を得られるよう、草の根的な広がりが必要。お茶の間でILCの意義を語り合えるレベルにならないといけない」と語った。だからこそ、市民感情に寄り添った対応を取るセンスが求められるのである。
(報道部・児玉直人)
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tanko 2013-6-1 5:00
 【東京、報道部=児玉直人】東北ILC推進協議会(事務局・東北経済連合会)は31日、内閣府や文部科学省などを訪問し、素粒子研究施設「国際リニアコライダー」(ILC)の日本誘致に向け、国家プロジェクトとして早期に位置付けるよう要望した。北上山地への誘致を推進する同協議会だが、実現するには政府が国家事業として位置付ける必要がある。要望活動に参加した岩手県の達増拓也知事は、「日本全体で取り組んでいこうという思いが、以前にも増して浸透しているように感じた」と一層の期待を込めた。

 要望活動を行ったのは、同協議会代表の里見進東北大学総長と高橋宏明東経連会長のほか、達増知事、村井嘉浩宮城県知事、小沢昌記奥州市長、勝部修一関市長ら。この日は山本一太科学技術担当相や丹羽秀樹文部科学政務官、長島忠美復興政務官、超党派組織「ILC国際研究所建設推進議員連盟」の河村建夫会長の元を訪問した。
 このうち山本担当相への要望で里見総長は、ILCにおける研究の意義を説きながら「本来ならば他国との競合が起きてもおかしくないプロジェクトだが、関係各国がこぞって支援を表明しているという状況だ。今、日本への誘致を表明しなければ後世に顔向けできなくなる。ぜひ国策として誘致することを早期に表明してほしい」と訴えた。
 達増知事は「科学者の間でベストな建設地を選定しており、必要な資料提供などの協力を進めている。東北誘致が決まったら、国内外の研究者らの生活環境支援などに全力を尽くす」。村井知事は「科学研究にとどまらず、シリコンバレーのように産業界への発展に結び付けるような工夫を図りたい」とそれぞれ述べた。
 要望後、達増知事は「山本担当相からは総合的に検討すると前向きの発言があり、かなり深い話もできた。まずは科学者間で立地場所の絞り込みをしてもらうことが必要で、そのために必要なデータは県としても積極的に提供していく。(国内候補地の絞り込みまで)政府も見届けているという感じだと思う」と話した。
 ILCの誘致をめぐっては北上山地のほか、北九州の脊振山地が国内有力候補地に挙がっている。これまで、米国のシカゴ近郊やスイスのジュネーブ近郊なども候補地に名を連ねていたが、経済情勢の悪化や過去に計画された国際プロジェクトの不調などを背景に、素粒子物理学者の間では日本への建設を求める声が急激に高まっている。
 このため、7月下旬に予定されている国内候補地の一本化は、事実上の建設地決定との見方が強く、東北と九州双方の誘致活動は活発化している。
写真=山本一太科学技術担当相(左)に要望書を手渡す東北大の里見進総長

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