人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2013-1-7 15:10
 素粒子研究施設「国際リニアコライダー(ILC)」の国内候補地が、今夏にも北上山地か北九州・脊振山地のいずれかに絞り込まれることを受け、誘致に向けた動きが一気に熱を帯びてきた。東北経済連合会(高橋宏明会長)は17日、根本匠復興相らにILCを国家プロジェクトとして位置付けるよう要望する。一方、岩手県ILC推進協議会(元持勝利会長)は今春、スイスの欧州原子核研究機構(CERN)の視察を計画しており、海外の素粒子研究者らに本県誘致への熱意を伝える。上野善晴副知事や小沢昌記奥州市長らの参加も検討中だ。

 今夏の判断はあくまで日本国内の候補地の絞り込みだが、「実質のILC建設地の決定」ととらえる見方もある。建設国が日本に決まる可能性が高まっているためで、それを裏付けるような出来事が昨年12月15日に東京都内で開かれた「ILC技術設計報告書」の完成発表会だ。
 計画全般にかかわる重要なセレモニーを欧米ではなく日本で開催。高エネルギー加速器研究機構(KEK、茨城県つくば市)の担当者は「世界の研究者間では『ILC実現の可能性が最も高いのが日本だ』という機運が以前より高まっている。ILCを受け入れたいという日本人研究者の意向と、ILCを何とか作りたいという世界の研究者の思惑が一致した」と説明する。こうした背景や夏までの“短期決戦”という時間的制約が、官民の誘致活動を活発化させている。
 東経連は震災復興と東北の経済振興を訴える要望の中で、ILCの国家プロジェクト化を安倍内閣に求める。根本復興相や文部科学省など関係省庁のほか、自民党の石破茂幹事長とも面会する。
 このほかにも18日から19日にかけては、奥州市国際交流協会や県技術士会、岩手県自動車整備振興会などがそれぞれ主催するILCに関する講演会が相次ぐ。30日には岩手県ILC推進協議会の主催で、県内経済団体の関係者約40人がKEKを視察する。
 同推進協は4月中旬にCERNの視察も計画している。経済団体の関係者のほか、上野副知事や小沢奥州市長らも参加に向け検討中という。同推進協事務局は「直接訪問により岩手の熱意を外国人研究者らにアピールする狙いがある」と話す。
 奥州市は今月発行の「広報おうしゅう」で4ページにわたるILC特集を組むなど市民周知への取り組みを加速。商工団体やJAなどと連携し、事業所や学校を含む公共施設に掲示するPRポスターを製作するほか、国際研究都市のイメージパンフレットの作製も進める。千葉望・市広域連携推進室長は「短期決戦なので、目に見える対外的な活動に力を入れたい」と意気込む。
 候補地の関係者は、日本政府の一刻も早い正式な意思表明を待ち望む。達増拓也知事ら青森、岩手、宮城、福島の4県知事は15日、震災復興施策に関する政府要望を実施。その際、根本復興相や下村博文文部科学相がILC誘致に前向きな発言があったとの報道もあり、岩手県政策推進室の細越健志ILC特命課長は「今までにないコメント」と評価。その上で「まだ政府としての公式見解が示されたわけではなく、喜ぶのは早い。いち早く正式な表明が出されることを願いたい」としている。
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tanko 2013-1-5 18:50
 2013(平成25)年市民新年交賀会は4日、水沢区佐倉河のプラザイン水沢で開かれ、出席した農商工団体や市議会議員、市民ら約250人がこの一年の飛躍を誓った。席上、市勢功労に選ばれた4人に表彰状を贈り、交通安全や教育など各分野での功績をたたえた。
 あいさつで小沢昌記市長は、今年の施策の柱に▽協働のまちづくり▽行財政改革▽国際リニアコライダー(ILC)の北上高地誘致――の3点を挙げ、「市政発展に渾身の力を尽くしていく。市民の一層の協力を心からお願いする」と述べた。
 また小沢市長は市勢功労者に対し「卓越した手腕をいかんなく発揮され、非常に困難な社会、経済情勢の中にありながら市勢の発展に尽力をいただいた」と感謝した。
 表彰を受けた4人を代表し、元市教育委員長の千葉啓一さん(73)=衣川区瀬原=は「この表彰を大きな糧とし、地域発展に微力ながら尽くしていかなければならないと思っている」と謝辞を述べた。
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tanko 2013-1-4 18:50
 「ブランディング」なる言葉がある。ブランド化というほどの意味で、都内5カ所の人気エリア、街の個性や魅力などの「パーソナリティー(個性)」の背景を探る目的で広告代理店の東急エージェンシーが、関東4都県の15歳から59歳までを対象に調査した。ブランドの定義は「この街で過ごしたいと生活者に思わせる力」。「街自体」と「街の活用」だ

 過ごしたい意識に影響を与える「安らぎ」「自己成長」「非日常感覚」の体験的価値。影響するのが「コミュニティー」「インフラ・施設」「歴史・文化」「生活基盤」「洗練イメージ」「清潔・安心」「自然環境」の7項目。これらが「街資産」になると分析した

 若々しい自分、刺激的な気分、専門的・個性的なショップ、エンターテインメント施設が充実する「渋谷」。「新宿」は刺激的気分、都会的な雰囲気。「池袋」は日用品の買い物のしやすさや庶民的な味。セレブで、オシャレな気分、大人で国際色豊かな雰囲気を持つのが「六本木」だ

 開業でよみがえった東京駅のある「丸ノ内・東京」は、背筋が伸びる気分、整然とした雰囲気、ビジネスビル街の雰囲気。下町の浅草・押上は、スカイツリーも建造され、懐かしい気分になれる人との触れあいを感じ、歴史的な場所、地域を代表する有名な食べ物、地元の人同士の交流が盛んで、下町・日本的な雰囲気という

 ひるがえって奥州市はどうか。「この街で過ごしたいと生活者に思わせる力」はあるだろうか。人口減少が危惧される。中央のまねをし、全国画一的な没個性の開発で生活しにくい、味気ない街になってはつまらない。幸いなことにILCの誘致に「夢」はつながっている。この機会に次世代とともに、国際化に向けた街づくりの分析や熟慮が必要だろう

 住民が生活しやすく、世界の人が集まり、満足が得られる街づくりの「コア(核心)要素」をいまこそ検討すべきだ。(風)
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tanko 2013-1-1 18:50
 1800年代後半、岩手・水沢の街はずれの土地に、とある青年と水沢町長(当時)らの一行がやってきた。「使える場所はどこか」と青年が尋ねると、町長はこう答えた。
 「この辺、ベロリでがす(この辺、一帯です)」
 「水沢にもベルリンがあるんですか!」と驚くその青年は、後にZ項を発見する天文学者・木村栄(ひさし)。石川県出身の彼は東北なまりがわからず、「ベロリ」がドイツの首都「ベルリン」と聞こえてしまったそうだ。1899年、その土地に臨時緯度観測所が開設され、木村が初代所長に就任した。
 それから1世紀余りの時を経て、「国立天文台水沢」となった現在も天文学者が国内外から集まり、宇宙や地球、月の謎を解き明かす挑戦に情熱を燃やしている。
 素粒子研究施設・国際リニアコライダー(ILC)の北上山地誘致の機運が高まっている。実現すれば、世界中の有能な科学者たちが集う「知の拠点」が形成されるが、その礎とも言える風土は、木村が活躍した時代から奥州・水沢の地に息づいているのだ。
 ※国立天文台水沢(水沢区星ガ丘町)には「水沢VLBI観測所」「RISE月惑星探査検討室」の2プロジェクトが常駐。今春稼動予定のスパコンの運用は、東京の同天文台・三鷹(本部)内の「天文シミュレーションプロジェクト」が担当しています。


 「科学技術のシンボルが水沢に来るわけですよ」。水沢VLBI観測所の川口則幸所長は、熱っぽく語る。2013年春、同天文台のスーパーコンピューター(スパコン)が観測所敷地内の建屋に設置される。
 これまで東京・三鷹の同天文台本部に設置していたスパコン。天体観測の成果や各種理論を反映させ、天体の誕生や消滅、太陽系や銀河系の歴史などを高精度の画像によって再現する。
 操作は三鷹に常駐する「天文シミュレーションプロジェクト」の研究者たちが行う。大容量のデータを送受信するため、超高速のネットワーク回線への接続点整備も進む。「施設一般公開のときには、まさに目玉の設備になるでしょう」と期待を寄せる。

写真=「このような感じの装置がここに来ますよ」と語る川口則幸所長。後方はスパコンが設置される建屋



 「これ、月に置く望遠鏡の試作品です」
 RISE月惑星探査検討室の佐々木晶室長と花田英夫准教授は、観測所本館地下の実験室に置いてある装置を紹介してくれた。
 2007年に打ち上げられた日本の月探査衛星「かぐや」は、月の周囲から観測した。次期探査では実際に月面に装置を置いて観測する。2人が見せてくれた望遠鏡を使い、月面から星を観測。それによって月の回転運動がわかり、そこから内部の構造を解き明かす。
 「どんな地形の所に置いても真上を向くような仕掛けが必要です。岩手大学と共同で開発を進めていますが、地域の大学教育に少しでも貢献できればと思います」(佐々木室長)
 夜空に輝く月を眺めながら、水沢で開発された「月面望遠鏡」に思いをはせる日が来るのは、そう遠くはないかもしれない。

写真=月面望遠鏡の開発などに取り組む佐々木晶室長(右)と花田英夫准教授

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