人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2013-1-31 18:10

 大学共同利用機関法人・高エネルギー加速器研究機構(KEK、茨城県つくば市)の鈴木厚人機構長は、江刺区東部を含む北上山地への誘致が期待されている、素粒子物理学の大型研究施設「国際リニアコライダー(ILC)」について、「ここ1年が日本誘致に向けた勝負のとき。世界中が盛り上がっているときこそ、日本政府は動くべきだ」と、国の早期の誘致表明を求めた。

 あらゆる物質の成り立ちの解明や宇宙誕生の謎を解き明かすことを主目的としたILCは、世界の素粒子研究者の間で計画されている国際的な研究施設。世界で唯一の大規模な施設となり、立地した地域周辺には国際研究都市が形成され、地方経済の活性化や地域振興を後押しすると期待されている。
 建設候補国には日本のほかアメリカ、スイス、ロシアなどが挙げられている。日本国内では北上山地、北九州の脊振山地の2カ所が候補地として有力視されており、今夏にも1カ所に絞り込まれる予定だ。
 今後、日本政府としての正式な誘致表明や、関係各国政府が建設予算の執行にゴーサインを出すかなど乗り越えなければならないハードルはいくつかあるが、海外では研究関係者やメディアを含め、日本での建設を有力視する見解が多い。
 ILC建設の技術詳細をまとめた「技術設計報告書(TDR)」の完成セレモニーが、昨年12月に東京・秋葉原で開催されたことも、日本有力説を裏付けているという。鈴木機構長は「この1年がまさに勝負時で、この時期を逸すると賞味期限が切れてしまうような事業だ」と強調した。
 また、増田寛也元岩手県知事が座長を務める日本創成会議が「地域開国」という言葉を用いて誘致する意義を述べていることに触れながら、「国際研究都市は単に外国人が住んでいるというよりは、むしろ地域に溶け込むような感じが求められるだろう」と述べた。

写真=ILC実現に向けた見通しなどを語るKEKの鈴木厚人機構長(茨城県つくば市・KEKつくばキャンパス)

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岩手の熱意アピール
 経済界関係者が、つくば研究施設を視察


 北上山地へのILC誘致を目指す本県の経済界関係者らは30日、茨城県つくば市の高エネルギー加速器研究機構(KEK)を訪れ、素粒子研究の現場やILCに用いる実験装置の開発状況を視察。ILC計画への理解を深めるとともに、研究者らに本県の誘致に対する熱意を示した。
 視察は、本県の経済団体などで組織する県ILC推進協議会(会長・元持勝利県商工会議所連合会長)が主催。胆江地区の関係者を含め約60人が参加した。
 一行は、KEKの鈴木厚人機構長から素粒子研究やILC計画の現状について説明を受けた後、電子と陽電子の衝突現象を調べる実験設備「KEKB」やILC専用の線形加速器「クライオモジュール」の開発状況などを見学した。
 クライオモジュールの開発現場では、微細な電子や陽電子が通り抜ける空洞部品なども紹介。ニオブという高価な希少金属を使う一方でわずかな傷でも使い物にならなくなるといい、担当者は「コスト高にならないよう、いかに歩留まりよく、効率的に量産できるか考えている」と説明した。

写真=ILC向け加速器の開発状況を見学する本県経済界の関係者ら
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tanko 2013-1-27 17:20
 茨城県つくば市の宇宙航空開発施設などを訪れ体験学習した奥州市内の中学生が25日夕、市役所江刺総合支所1階多目的ホールで研修成果を報告した。最先端の科学技術に触れた貴重な体験を糧に、今後の学習につなげていくことを誓った。
 科学体験研修事業は、旧水沢市時代の2003(平成15)年度にスタート。市内各区の中学2年生を対象に毎年実施している。今回は「We have a dream〜進歩し続ける科学を自分たちの目で学ぼう〜」を研修テーマに掲げ、21人が参加。今月7日から2泊3日の日程で、高エネルギー加速器研究機構(KEK)と宇宙航空研究開発機構(JAXA)を訪れた。
 報告会には、生徒の保護者や学校関係者らを含めて約90人が出席。小沢昌記市長はあいさつで、北上山地が有力候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)について触れ「皆さんが30歳ぐらいになった時、世界の最先端の研究施設として、ここが世界中から研究者が集まる研究都市になるかもしれない。一翼を担う頭脳として、地元、日本、世界のために活躍できるような志を持ってほしい」を語り掛けた。
 参加生徒は班ごとに、KEKとJAXAでの施設見学や研究者による講義、体験学習の成果を報告した。
 KEKでは、スイスの欧州原子核研究機構(CERN)にある加速器の9分の1規模で「同じ結果を出している」ことに驚き、「日本の技術を発展させ、新しい発見をしてほしい」と生徒たち。学んだことを整理し発表することを通し、難しい専門分野の知識を自分たちのものとして吸収していた。
 研修生を代表し、市立水沢中の佐藤龍馬君(14)は「自分たちの努力と支援してくれた人たちの期待を裏切らないためにも、活動の成果を生かし、将来へのエネルギーにしていく」と誓った。

写真=研修成果を報告する中学生たち
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tanko 2013-1-22 17:30

 小沢昌記奥州市長による2013(平成25)年度当初予算の査定が21日、始まった。市財政は今後、歳入規模が年々縮減する見通し。厳しい台所事情を抱える中、歳出抑制は持続可能な財政運営を目指す上で避けられない。一般財源(市税や地方交付税など)ベースでの歳出が、本年度当初371億円を下回る編成ができるかが、新年度予算の焦点の一つだ。
 市長査定は21日から23日までの3日間行われる。来年3月に任期満了を迎える小沢市長にとって、2014年度の当初予算は骨格編成にとどまるため、2013年度が1期4年間の市政運営で独自色を打ち出す最後の予算になる。
 2013年度予算の歳入は、地方交付税は本年度当初202億2500万円を下回る見通し。地域主権改革で地方交付税を増額させた民主党から、自民、公明両党に政権が移ったことに伴い交付税の在り方に不透明な部分もあるため、現段階では慎重に見込む。
 市民税は、本年度当初の47億6100万円を上回る一方、固定資産税は本年度当初の61億9400万円から落ち込む見通し。固定資産税落ち込みの背景には、家屋や大型施設の建設数が伸び悩んでいることがある。軽自動車税やたばこ税を含めた市税全体は、ほぼ横ばいとなりそうだ。
 歳出については、財務部が昨年10月の予算編成方針で、一般財源ベースで本年度の95%以内、352億円以下とする目標を設定した。各種団体などへの補助金・負担金と物件費は5%削減の努力目標を掲げており、どこまで歳出抑制に踏み込むことができるかが注視される。
 予算編成に当たり小沢市長は「本年度と同様、財政調整基金を取り崩すことない予算編成にしたい。要望はどれも大切だが、取捨選択をしなければならない」と述べた。13年度施策の柱に掲げる▽行財政改革▽協働のまちづくり▽国際リニアコライダー(ILC)の東北誘致――の推進には強い意欲を示した。
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tanko 2013-1-21 17:30
 岩手県市議会議長会(会長・村田芳三盛岡市議会議長)は、2月上旬に文科省や復興庁を訪れ、国際リニアコライダー(ILC)の東北誘致を要望する方針だ。ILCは北上山地と脊振山地(福岡、佐賀両県)の国内候補地2カ所から、今年7月までに1カ所に絞り込まれる見通し。正念場を迎え、本県の全13市議会が一丸となって誘致実現を目指す。
 議長会としての要望活動は、このほど一関市内で開かれた定期総会で、ILC誘致に関する奥州、一関両市議会の共同提出議案が承認されたことで具体化した。承認後、沿岸部の議長が「議長会として早めにILCの各種行動を起こすべき」と緊急提案し、了承された。
 これらを受け議長会は、2月上旬に上京して文科省、復興庁、社団法人国際経済政策調査会を訪問する予定。大臣や副大臣に対して直接要望できるかどうかを含め日程調整している。
 奥州、一関両市議会は議案の中で、宇宙の起源の解明に加え、医療、生命科学、情報通信などの進展にもつながる実験施設・ILCの東北誘致は、東日本大震災から復興する原動力になると指摘。国に対し、国家プロジェクトとして東北誘致を正式決定するよう求める内容となっている。
 奥州市議会の渡辺忠議長は「県市議会議長会が一体となって行動することになり、ありがたい。議長会として今後、ILC誘致に向けた行動をさらに盛り上げていかなければならないと思っている」と話す。
 ILCは世界に1カ所造られる。建設費約8000億円が見込まれる国際プロジェクトだ。2015年ごろまでに各国間で協議して建設地を決め、20年代後半に施設が稼働する予定。
 ILCをめぐり岩手、青森、宮城、福島の4県知事はこのほど、文科省や復興庁に対する大震災復興施策に関する要望の中で、東北誘致を実現させるよう求めた。
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tanko 2013-1-20 17:30
 国際リニアコライダー(ILC)国際研究チーム・アジア地区ディレクターで、高エネルギー加速器研究機構(KEK、茨城県つくば市)の横谷馨名誉教授は19日、市国際交流協会主催の講演会開会前に胆江日日新聞社の取材に応じ、「今、最も気にかかるのは外国政府の意向。各国政府に対し、どうプッシュしていくかが重要になってくる」との考えを示した。

 ILC建設をめぐり、日本では今夏にも北上山地か脊振山地(北九州)かに国内候補地が絞り込まれる。ここ数日、下村博文文部科学相や根本匠復興相ら関係閣僚の間から日本への誘致に前向きな発言が相次ぐなど、政府として正式に誘致へ乗り出す可能性が高まっている。
 しかし横谷氏は「本当に重要なのは海外政府の意向」と語る。ILCの建設費は2007(平成19)年時点の試算で約8000億円に上り、関係国間で分担する。その半分はホスト国(建設地の国)が支出する見込みだが、欧米諸国もそれなりの負担が生じる。
 横谷氏は「国内外の科学者たちは、ILCを実現させたいと思っている。だが、欧米の政府が実際に費用や人を出すことを認めてくれるかどうかが問題で、まだ見えてこない。日本政府だけがILC受け入れを了承したところで、実現できるものではない」と強調。
 「ここ5年でまったく進展がなければ、計画自体が立ち消えになる恐れがある。3年ぐらいの間に実施するか否かの結果が出なければいけない。(KEKの)鈴木厚人機構長を中心に、関係各国への働き掛けを強めていくことになるだろう」と話した。

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外国市民も実現へ期待 (水沢で初、英語でILC講演会)
 外国人市民らを対象とした国際リニアコライダー(ILC)講演会が19日、奥州宇宙遊学館(河野宣之館長)で開かれた。市国際交流協会(佐藤剛会長)が主催。ILC国際研究チーム・アジア地区ディレクターを務めているKEK名誉教授の横谷馨氏が、素粒子研究の基礎知識やILCの概要などを英語で解説した。北上山地が有力候補地となっているILCは、素粒子物理学の国際的な研究拠点に位置付けられており、聴講した外国人は「実現したら東北はとても素晴らしい地域になるだろう」と期待を寄せた。

 胆江地区とその周辺に暮らす英語圏出身の外国人市民12人が参加。このほか、県立水沢高校の生徒や一般市民、県議、市議ら約60人も詰め掛け、ILC計画への関心の高さをうかがわせた。
 講演に先立ち、佐藤会長が「東京ではオリンピック、東北ではILCの誘致に一生懸命だ。オリンピックは2週間ほどで終了するのに対し、ILCは半世紀近くにわたり科学研究の拠点となる。震災復興の面でもプラスになるだろう」。小沢昌記市長は「ILC誘致は経済や雇用にも大きな効果をもたらす。最先端の発見でノーベル賞がこの地から誕生することもあり得る。誘致が実現し、外国人研究者が住むようになったら、ぜひ彼らをサポートしてほしい」と、ともに英語であいさつした。
 講演で横谷氏は、素粒子物理学の基礎知識やILCの必要性、どのような研究施設になるのかなどを分かりやすく解説した。横谷氏によると、専門家が集まる学会などでは英語でやりとりするが、一般の外国人に英語でILCや物理学の基礎などを説明をする場面はほとんどなく、横谷氏自身にとっても初めての体験となった。
 参加者は「日本以外にも候補地はあるのか」「地震や電力不足の影響は大丈夫か」などと質問。横谷氏は「アメリカのシカゴ近郊やCERN(欧州原子核研究機構)があるスイス、ロシア、ドイツなども候補に挙がっている」「東日本大震災の時は、確かに地上では大変な被害を受けたが、仙台市の地下鉄など地下にある施設は大きな被害を受けなかった」などと説明した。
 イギリス出身で北上市に住んでいるジャクソン・リーさん(26)は「とても分かりやすかった。もしILCがここに来たら、東北は世界中の人から見ても有名な場所になるし、経済的にも発展するのでは」と話していた。

写真=地域在住の外国人らに対し英語でILC計画を説明する横谷馨・KEK名誉教授(奥州宇宙遊学館)
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tanko 2013-1-18 17:40
 根本匠復興相は17日、社団法人東北経済連合会(会長・高橋宏明東北電力?会長)の震災復興等を求める要望を受け、北上山地が有力候補地となっている素粒子研究施設・国際リニアコライダー(ILC)について「国として取り組むべきものだと思う」との考えを示し、あらためて誘致に前向きな姿勢をみせた。

 東経連は「安倍内閣に望む―大震災からの復興の加速を―」のタイトルで要望書を作成した。東日本大震災被災地の暮らしや産業の再建が遅れていること、福島第1原発事故の影響が長引いていることを懸念。時間経過とともに内外の関心が薄れてきていることを憂慮し、復興の加速など6項目を掲げ、その中に復興の象徴プロジェクトとしての「ILC誘致の実現」を盛り込んだ。
 同日の要望活動には、高橋会長や東経連の震災復興対策委員会委員長を務める福井邦顕副会長(日本全薬工業?会長)らが参加。関係省庁のほか、自民党の浜田靖一幹事長代理にも要望書を手渡した。
 東経連によると、訪問先の一つである復興庁で根本復興相は、要望内容について前向きに受け止めた。ILCについては「国として取り組むべきもの」との認識を示した。
 ILC誘致について、国は正式な誘致表明をしていないが、15日の達増拓也知事ら東北被災4件の県知事による復興要望の場でも、根本復興相のほか下村博文文科相が、実現に前向きな姿勢をみせている。
 達増知事は16日の定例会見で「皆で力を合わせてアピールし続けてきたことが一歩前進につながった。引き続き、地元で理解を深め、関係者一丸となっての対外的アピールの強化が必要だと思う」と話している。
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tanko 2013-1-16 18:20
 にわかに話題にのぼることが多くなってきたILC(インターナショナル・リニア・コライダー=国際的な直線加速器)の国内での建設候補地は、この夏にも決まる見通しという。国内2カ所の候補地が一本化され、海外の候補地とともに場所選びが本格化する。大型研究施設の建設計画は建設の可否を含めて、どう進むのか予想しにくい状況ながら、夢のある壮大な計画だ。
 素粒子物理学の世界的な研究施設と聞いても、理解しにくいものの、物理学の世界でノーベル賞を受賞するほどの発見が期待できる施設となると、画期的で権威を感じる。しかも、奥州市を含む本県南部が建設地候補であるとなると、夢はさらに膨らむ。
 国内候補地は、江刺区米里に連なる北上山地、福岡と佐賀の県境に連なる脊振山地。
 ILCは、最先端技術が結集した超精密なシステムによってつくられるため、地震などの影響を受けない地層が求められる。北上山地は、地殻震動を受けにくい花崗岩が広がっているほか、活断層もないと推定される。加えて、交通アクセスや周辺の社会資本も一定水準にある。
 もともと、北上山地の地殻特性などに着目して設置されたのが、国立天文台水沢VLBI観測所の江刺地球潮汐観測施設。1979年に江刺・阿原山に建設された。天体科学の観測などの素地があることなども強みとされる。
 ILC計画自体は、2003年に各国の研究者間で合意に達し、大まかな年次計画がつくられているものの、建設計画自体、正式に決まっていないのが現状。現在、スイス近郊にあるLHC(大型ハドロン衝突型加速器)が世界最大の素粒子加速器で、次世代の研究施設としてILC計画があるというわけだ。
 本県では当初、五輪の招致活動とは違う性格のためか、表立った誘致運動を控えてきたが、東日本大震災後に「復興のシンボルに」と達増拓也知事が提唱し、奥州市でも誘致に本腰を入れ始めた。
 夢の研究施設は、実益にもつながる。
 東北各県と経済団体などでつくる東北ILC推進協議会が昨年夏にまとめた将来ビジョンは、一つの学術研究都市が形成される見通しを含めて目を引く内容ばかりだ。
 世界的な研究施設としての価値をはじめ、産業振興や地域の活性化に向けられる恩恵も大きい。加速器の関連技術として、機械加工、計測・制御、電気・電子などが挙げられる一方、ILC計画で生み出される技術も超電導や医療、生命科学、環境・エネルギーなど多岐にわたる。
 医療だけを見ても、がんなどの治療に新たな技術が活用される期待感も高く、新たな産業創出の意味でも価値ある研究と言える。
 ただ、どの国が、どこに研究施設をつくるかは決まっていない。自民党はマニフェストにILC計画の推進を盛り込んでいるものの、国としてどう取り組むかの意思表示はないのが現状。
 当面は、国内の候補地の一本化を見据え、国家戦略が練られるのだろうが、経済効果4兆円超、雇用創出�~万とも予想されるILC計画の当該地域にあって、一層の機運醸成に努めたいものだ。
(編集委員:小野寺和人)
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tanko 2013-1-12 18:20
 北上山地が有力候補地となっている素粒子研究施設、国際リニアコライダー(ILC)の誘致に当たり奥州市国際交流協会(佐藤剛会長)は、市内在住の外国人市民の協力を得る取り組みを進める。手始めとして19日、外国人市民らを対象にした英語による研修会を開催し、ILCへの理解を深めてもらう。建設地決定に際しては、外国人研究者とその家族の受け入れについて、地域がどれほど熱意を持った対応ができるかが重要なポイントとなっている。

 ILCの建設が北上山地に決まった場合、胆江地区を含めた県南地域には、ピーク時で研究者と技術者だけでも3000人以上が集まると予想されている。外国人が数多く居住することになる。
 欧米社会では家族同伴で移住する習慣があることに加え、移住する人たちに対する各種サービス事業関係の外国人が移住する可能性もあり、実際にはさらに多くの外国人が居住すると見込まれる。
 ILC計画を推進している研究者らは建設地を決定する上で、地盤などの科学的条件に加え、外国人の居住環境や受け入れに対する地元の姿勢を重視している。こうした状況を受け同協会は「外国人と日本人市民がお互いを認め合い共生していくためには、母国を離れ異文化の中で生活している外国人市民がさまざまな面で大きなサポート役になる」として、外国人市民の存在を生かした取り組みを推進することにした。
 同協会によると、昨年7月現在の市内外国人登録者数は468人で、奥州市人口の約0.4%。中国やフィリピンなど近隣アジア諸国が中心だが、欧米出身者もいる。
 ILCは国際的レベルの研究事業ではあるが、外国人市民に対する情報発信は不十分。そこで同協会は、19日午後1時半から奥州宇宙遊学館で外国人市民向け研修会を開催。ILC国際共同設計チーム・アジア地域ディレクターの横谷馨さん(高エネルギー加速器研究機構名誉教授)を講師に招き、英語でILCの概要を説明してもらう。
 当日は平泉町内で外国人向けの世界遺産ガイドを務めている「岩手ひらいずみ通訳・ガイドの会」のメンバーや、県立水沢高校の生徒らも参加する。
 同協会は「外国人市民の多くは『地域のために何か役立つことをしたい』という思いがあり、ILCが実現した際にはとても力強い存在となる。日本人市民に対しても、文化や言葉の違いを乗り越えられるような取り組みが求められてくる。協会として果たすべき重要な役割が、これからどんどん出てくるだろう」と話している。

写真=外国人市民向けに、英語のみで実施するILC研修会のポスター
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tanko 2013-1-10 18:40
 小沢昌記市長は9日の定例記者会見で、新年度の市政運営について▽協働のまちづくり▽行財政改革▽国際リニアコライダー(ILC)誘致――の3項目を柱に展開する意向を示した。
 市財政規模が縮減していく実態を捉え、小沢市長は「少子高齢化の時代でも奥州市が発展し続けられる基盤を今こそ、作り上げなければない」と行革推進に意欲をみせた。
 協働のまちづくりについて「制度は出来上がった。新年度は運用する人づくりに力を尽くしたい」と強調。国内でのILC候補地の一本化が見込まれる今夏に向けては「東北誘致に力を挙げて対応する」と述べた。
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tanko 2013-1-8 18:40
 NPO法人イーハトーブ宇宙実践センター理事の酒井栄さん=奥州市水沢区東大通り=が、北東の空を移動する「リニア彗星」の撮影に成功した。胆江地区では、北上山地への誘致が期待される「国際リニアコライダー(ILC)」の話題が新年からにぎわせているが、その「リニア」とは全く関係ないという。
 リニア彗星は、北東の空に見える北斗七星の近くを移動中。昨年12月30日に地球から約4338万kmの位置まで接近した。酒井さんが撮影に挑んだ同18日から19日にかけての夜には、彗星の象徴でもあるダストテイル(ちりの尾)が見事に伸びている様子が確認できた。
 「リニア」と言えば、北上山地が有力候補地となっているILCや、超高速鉄道「リニアモーターカー」をイメージしがち。どちらも英語で「直線の」という意味から来ている。
 一方、リニア彗星の場合は「直線」とは関係がない。地球に近づく小惑星を調査する米国の「リンカーン地球近傍小惑星探査((Lincoln Near-Earth Asteroid Research)」の略称が「LINEAR」で、この探査事業によって発見された彗星であることが由来だという。
 同探査で発見された彗星は140個以上あり、今回酒井さんが撮影したのは「C/2012 K5」という昨年5月に発見されたばかりのものだった。

写真=酒井栄さんが撮影したリニア彗星(C/2012 K5)。昨年12月19日午前零時43分

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