人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2009-12-12 19:50
 政府の行政刷新会議による「事業仕分け」で、国立天文台水沢VLBI観測所(小林秀行所長)などが関係する観測事業の関連経費が縮減対象になっている。これを受け、同天文台(観山正見台長)は11日、予算縮減の方向性に対する国民意見の募集を開始した。観山台長は、「一方的な事業仕分けに基づく経費配分縮減の方向性には大きな懸念を抱く。学術推進に大きなマイナス影響をもたらす」と反発している。

 縮減対象になるのは、同観測所が担当している天文広域精測望遠鏡(VERA)の事業費をはじめ、ハワイ島に設置している「すばる望遠鏡」の運営費など。これらの経費は、国立大学運営費交付金に属する「特別教育研究経費」から配分される。事業仕分けでは、同研究経費に対し「予算要求の縮減」との結論が出た。
 同天文台広報室によると、仕分け作業の場では同経費に関する直接的な議論はなされなかったといい、「委員の採点結果で縮減が決定される事態となった」と説明。縮減規模は不明で、一部には3割減との見解も出ているという。
 経費が削減されると、国際的にも重要がある研究事業が停滞する恐れがある。同観測所にあるVERA観測用の電波望遠鏡(20mアンテナ)は、中国や韓国の観測施設と連動活用することもあり、相手国の研究者に対する大きな責任を背負っているという。
 観山台長は経費削減の危機に関するアピール文で、「内部でも経費節減の努力をしてきた。今回の一方的な仕分けに基づく縮減の方向性には大きな懸念を抱く」と主張。「予算縮減の方向性に対する率直な意見を寄せてほしい」と呼び掛けている。
 同研究費の削減に対しては、北上高地が有力候補地の国際直線衝突加速器(ILC)の国内推進母体である、高エネルギー加速器研究機構(KEK)などからも強い反発の声が上がっている。KEKも同天文台と同様、国民意見を募る取り組みを実施した。
写真=水沢VLBI観測所内にあるVERA観測用の20mアンテナ。観測事業の関連経費が縮減対象に――

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