人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)
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tanko 2009-2-27 19:20
 宇宙誕生の謎を解き明かす、大掛かりな研究施設「国際直線衝突加速器(インターナショナル・リニア・コライダー=ILC)」の建設候補地に、北上高地の名前が浮上している。素粒子の衝突実験により、宇宙誕生(ビッグバン)直後の様子を再現。地球や人類が存在することになった根源ともいえる宇宙誕生の謎に迫る。国際協調により、同施設の設置は世界で一つだけとなる。全世界から研究者や関連機関が集結する「国際科学都市」の構築も想定される。

 素粒子は、この世に存在する、すべてのものを構成している最小単位とされる。
 ILCは素粒子のうち、電子と陽電子を使い、直線トンネルの中間部分で正面衝突させる超大型の実験設備。この衝突により生じた状況が、宇宙誕生直後の状態を再現したものになるという。衝突時の反応や素粒子の状況を調べ、どのように宇宙や、物質が誕生したのかを解明していく。
 衝突する際の電子、陽電子の速度が速ければ速いほど、宇宙誕生の謎解明に近づく。その速さは光の速度(秒速約30万km)に限りなく近いものでなければいけない。この速さにまで電子、陽電子を導き出す装置が加速器(コライダー)と呼ばれる装置だ。
 素粒子研究のための加速器は現在も世界各国にあるが、敷地や設置経費の関係上、円形状の装置が多い。ILCは、直線状(リニア)のトンネルを用いるため、カーブによるエネルギー減衰が解消できる。
 現在、世界の素粒子研究機関の間で候補地を検討中。2020年ごろの稼働を目指している。これを受け、日本でも超党派国会議員による建設推進連盟が結成されるなど、誘致に向けた動きが出始めている。
 ILCの性能を十分に発揮するには、安定した地盤にトンネルを造る必要があり、その長さも31kmから50kmの直線でなければいけないという。候補地として、日本では北上高地のほか、北九州の脊振山地、福島県の阿武隈高地、茨城県の北茨城地区などの名が挙がっている。
 北上山地を形成する江刺区伊手の阿原山には、国立天文台の江刺地球潮汐観測施設がある。花こう岩体の地中に造られた学術研究施設で、安定した観測環境により世界第一級のデータが得られている。
 同観測所の担当者は、「仮にILCが北上山地に造られたとしても、よほど近くで建設工事などが行われない限り、こちらの観測には直接影響しない」と話している。
 26日の県議会一般質問でも、亀卦川富夫氏(奥州選挙区選出)がILC誘致に関する県側の考えを問いただした。達増拓也知事は、「政府としても誘致に向け動きだしており、調査検討のための地質条件調査や資料提供などをしていきたい。東北経済連合会でも、普及活動や研究会を検討しているので、連携を密にし、社会理解が進むようにしていきたい」と述べた。

写真=国際直線衝突加速器(ILC)の想像図(ILC計画パンフレットより)

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