広報の在るべき姿 追い求め(国立天文台水沢特任専門員、小沢友彦さん(51))
- 投稿者 :
- tanko 2020-12-20 11:10

「やはり天文学の仕事をしたい」。和歌山県内の自治体職員を辞め、縁あって国立天文台水沢VLBI観測所の広報担当の特任専門員として赴任したのは2018(平成30)年3月。一度は離れた組織に、形は異なるが身を置くことになった。
生まれは東京都八王子市。幼少年時代、まだ周囲は田舎の風景が残っていた。根っからの理科好き。お年玉をためて天体望遠鏡を買い、夜中に友だちと星空観察に出掛けた。高校2年に上がる前の春休みには、ハレー彗星の接近を見るため、わざわざオーストラリアへ出掛けたほどだ。
弘前大学大学院で物理学を専攻。修士課程を修了し、総合研究大学院大学へ。国立天文台で博士号取得を目指したが、道半ばで断念した。だが、その間に培った人脈、就職先の和歌山県内の自治体で任された公共施設管理業務などの多様な経験は、現在の仕事に生かせるものばかりだった。
就任後、本間稀樹所長ら観測所スタッフに「ある程度の権限を持たせてほしい」と要請した。「何かするたびに全体の意見、了承を得ていたら時間がかかる。情報はタイムリーに発信されなければ、誰にも注目されない」
昨年から今年にかけては、手腕が試される出来事の連続だった。ブラックホール撮影成功の発表を機に、取材や講演の依頼が殺到。観測所創立120周年にも対応する目まぐるしさだった。
ほっとしたところに舞い込んできたのが、観測所予算の大幅削減問題。研究者界だけでなく地域に与える衝撃も大きいだけに、本間所長とタイミングや発信内容について何度も議論を交わした。
組織広報でよくあるのは、トップダウン的に上層からの見解が内部通達され、その意向や指示通りに担当部門が情報発信する姿。しかし、ここでは広報もトップも対等の立場だ。
都合の悪い話になると、トップが表に出ず担当者に説明させるケースも少なくない。だが「今はトップが前に出て自分の言葉で語る時代。プラスの話に限らず、マイナスの話であっても結果としていい形に働く。所長はその辺をものすごく理解している。なかなかいない研究者だ」。大きな信頼を寄せる。
「電波望遠鏡の存続署名など市民の皆さんの温かい思い、応援したいという力に真っ先に触れることができるポジション。この喜びが仕事の原動力にもなる」とほほ笑む。
(児玉直人)
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執務室の机の下には、弘前大時代に恩師・二間瀬敏史氏(宇宙物理学)の勧めで買った天体望遠鏡がある。「買ったというか、買わされたというか…」と笑う。休みはゆっくり自宅で過ごすか、ドライブがてらの食べ歩き。北上市在住。