人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

ILC誘致、国内外で準備着々と(岩手県推進監「政府判断の後押しに」)

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tanko 2020-11-18 9:30
 岩手県が素粒子物理学者と共に北上山地への誘致を進める地下実験施設、国際リニアコライダー(ILC)について、県ILC推進局ILC推進監の植野歩未氏は17日、市役所本庁3階講堂で講演した。国際推進チーム(IDT)や東北ILC事業推進センターの発足、欧米からの支持などを背景に、実現に向けた準備が着々と進められていることをアピール。有力候補地である同山地周辺自治体などによる受け入れ態勢の協議が行われている点などについて、「日本政府の次の意思表示の後押しにもなる」と強調した。
(児玉直人)

 植野氏は、市ILC推進連絡協議会(会長・小沢昌記市長)総会後の講演会で登壇。同協議会会員団体の関係者のほか一般にも公開され、約20人が聴講した。
 ILCの国内推進母体である高エネルギー加速器研究機構(KEK)が、文部科学省に提出した「学術研究の大型プロジェクトの推進に関する基本構想ロードマップ(2020)」に係る申請を取り下げた点について、植野氏は「申請直後にILCの国際協力体制を巡る動きに進展が見られた」とするKEKの見解を紹介した。その上で「3月に取り下げた事実を9月に公表したのが問題となった。一部研究者が謝罪した」と説明した。
 ロードマップへの掲載など文科省がILC実現のために当初示していた「正式プロセス」は、研究者サイドから提示する「ボトムアップ型」と呼ばれる仕組み。だが植野氏は、文科省の公開資料を基にしながら、「ロードマップで取り扱う事業の予算枠は300億円程度。そもそも8000億円という規模のILCは、この枠組みに最初から入らない」と指摘した。
 一方で、昨年日本が参加を決めた米国主導の有人月探査「アルテミス計画」のように、政府が能動的に決めていく「トップダウン型」という手法もあり、「こちらのやり方で進められていくのではないか」との見解も示した。
 アルテミス計画のほか、国際宇宙ステーションや国際熱核融合実験炉などもトップダウンの例だと植野氏。いずれも他国が主体的に行っているプロジェクトに日本が参加してきたが、「ILCは(実現すれば)省庁横断で取り組み、初めて日本がホストするプロジェクトになり得る」とした。
 ILC実現の可能性を感じさせる動向も列挙。新しい欧州素粒子物理戦略では、ILCへの期待が明記された。米国ではエネルギー省を中心としてきたILCの対応に、国務省も加わった。省庁横断的にILCへの強力な支持が打ち出されている。
 北上山地周辺に目を向ければ、東北ILC事業推進センターの発足により岩手県南、宮城県北の市町を交えながらの受け入れ態勢協議が進む。
 「研究者組織や産業界だけでなく、欧米の政府機関、東北の候補地の動きは、着実に日本政府の後押しになっている」と植野氏。「『ILCが正式決定していないのに、なぜこういう組織ばかり作っているのか』という質問をいただくが、『東北はここまで準備しているんだ』という強い意志を示すのも、誘致実現を進める上での一つの戦略だ」と強調した。
 まとめで植野氏は、「8月にIDTが発足し、1年半で次のステップである『ILC準備研究所』の設立に入る。それまでの間に、日本政府からまた新たな意思表示が出ることを期待したい。奥州市は国際交流協会による医療通訳が積極的に行われるほか、国立天文台の存在によるサイエンスへの理解がある土地柄。ILC計画に対しても早い段階からアプローチしていた。まちづくりビジョンの具体化などをぜひ進めてほしい」と呼び掛けた。
 一般聴講者からは、ILCの安全性についての質問が出た。植野氏は「粒子ビームが最終的に到達する『ビームダンプ』と呼ばれる設備で、放射性物質のトリチウムが発生するため、外部に流出しないよう厳格な対策が講じられる。年明けには、安全対策に関する解説セミナーを予定している」と答えた。

写真=ILCの最近の動向について説明する県ILC推進監の植野歩未氏
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