人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

何事にも「科学の心」 (Zの栄光永遠にぁ〔畋識蒜郢寮乎贈隠毅闇)

投稿者 : 
tanko 2020-10-28 11:10


左上から右へ、緯度観測所長の木村栄(1899年9月〜1941年4月《臨時緯度観測所時代含む》)、川崎俊一(1941年4月〜1943年1月)、池田徹郎(1943年1月〜1963年5月)、奥田豊三(1963年5月〜1976年6月)、坪川家恒(1976年6月〜1986年3月)。国立天文台地球回転研究系主幹の若生康二郎(1988年7月〜1991年3月)、笹尾哲夫(1991年4月〜1993年3月)、横山紘一(1993年4月〜2000年3月)、河野宣之(2000年4月〜2002年3月)、真鍋盛二(2002年4月〜2004年3月、2004年4月〜2006年3月は国立天文台水沢観測所長)。国立天文台水沢VERA観測所長の小林秀行(2006年4月〜2010年3月)。国立天文台水沢VLBI観測所長の川口則幸(2010年4月〜2014年3月)、本間希樹(2015年4月〜 )=敬称略
★注1…1988年7月から2004年3月は「地球回転研究系」と「水沢観測センター」が併設され、「地球回転研究系主幹」が所長に相当する役割を担った。
★注2…1986年4月〜1988年6月は細山謙之輔、2014年4月〜2014年11月は小林秀行、2014年12月〜2015年3月は高見英樹の各氏が所長事務取扱者を務める。


 木村榮記念館の管理を担当する国立天文台水沢VLBI観測所の亀谷收助教は「木村博士は当時、最も著名な科学者の一人だった」と語る。連載の最終回にあたり、木村博士にまつわるエピソードなどに触れたい。


写真=水沢図書館に保管されている木村栄博士8歳の時の書(原物)

 木村博士は金沢市の篠木家に生まれ、1歳で親戚の木村家の養子となる。塾を開設していた木村家では、朝から晩まで勉強漬けの日々。その一端をうかがわせるものが、奥州市立水沢図書館に保管されている。4歳と8歳の時の書で、子どもが書いたとは思えないほど達筆だ。複製品は同記念館に展示されている。
 臨時緯度観測所長として赴任したのは29歳という若さ。その当時の有名な逸話が「ベロリでがす」だ。
 観測所予定地に足を運んだ木村博士は、案内人の水沢町長(当時)に、どの辺が使える土地なのか尋ねた。町長は「この辺、ベロリでがす」と答えた。木村博士は、町長のなまり言葉が理解できず、「ここはベルリンというのですか!」と驚いたという。観測所の歴史を調査・研究している一橋大学社会科学古典資料センターの馬場幸栄助教は、木村博士の水沢赴任までの時間的経過などから、「ベロリでがす」と語った当人は、第5代町長の柳沢高令氏(在任1899年5月2日―1901年3月13日)と推測している。
 1941(昭和16)年4月、木村博士は緯度観測所を退官。2年後の43年9月26日、東京世田谷の自宅で72年の生涯を閉じた。多磨霊園の木村家墓誌には「理宙院殿釋旻榮大居士」の戒名が刻まれている。


写真=書をしたためる木村栄博士。池田徹郎・3代所長の随筆『めたせこいや』によると、所員や市民から書を求められることが多かった木村博士は、自分の誕生日になると朝から所長官舎でまとめて揮毫していた。奥の間に書き終えた大量の書が見える=(C)馬場幸栄

 退官直後、木村博士は「科学する心」と題し講話。その肉声が残っており、次のようなことを語っている。
 〈「科学する心」は子どものうちから、ちゃんとある。しかし、成長するに従って「科学する心」は減っていく。また「星の研究をしなければ、科学する心じゃない」という人もいるが、それは間違っている。商売一つにしても、何かを作るにしても必ず「科学する心」を持たなければいけない〉
 「今の時代にも通じるものがある」と亀谷助教は、肉声を聞きながらしみじみと語る。
 緯度観測所は88年、東京天文台、名古屋大学空電研究所と統合し、国立天文台に改組される。
 観測対象や手法も時代とともに変化。夜間観測に限られていた光学式望遠鏡から、昼夜問わず観察できる電波望遠鏡が主力に。地球の動きを研究対象にしていたが、現在は地球から遠く離れ自ら姿を見せない「ブラックホール」の謎に迫っている。本間希樹所長はじめ天文台関係者は、木村博士が水沢で花開かせた科学者精神を受け継ぎ、今日も研究にいそしんでいる。
(おわり)
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