人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

「落書き」にあらず・所長室肖像画(「Z」の栄光永遠に? 木村栄博士生誕150年)

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tanko 2020-10-21 9:10

写真1=「所長室」を再現した部屋

 「所長室」を再現した館内の一室に掲げられている木村栄博士の肖像画。1930(昭和5)年、還暦祝いに職員が贈ったものだ。
 肖像画は、県議会議長なども歴任した紫波町出身の画家・橋本八百二(はしもと・やおじ)氏が描いた。一橋大学社会科学古典資料センターの馬場幸栄(ばば・ゆきえ)助教は、数年前から国立天文台水沢VLBI観測所内の図書館を調査。大量のガラス乾板を発見した。その中に、完成間もない肖像画と共に写る木村博士と橋本氏らの姿があった。


写真2=ガラス乾板よりプリントした、肖像画完成間もないころの写真。左前列から木村真佐喜(木村の妻)、木村栄、橋本八百二、大川英八(画家)、小泉一郎(同)。後列左から山崎正光(所員)、吉田伊之吉(同)、池田徹郎(同、後の3代目所長)=(C)馬場幸栄

 木村博士の背後に、ぐるぐると描かれた落書きのような線が見える。馬場助教によると、国際緯度観測事業の観測結果により得られた地球極運動を示した「掛け図」だという。現在のようにプロジェクターやパソコンを使って図を表示できなかった時代、学会や講演会では掛け図を壇上に掲げ、説明していたという。
 よく見ると、中央に垂直にうっすらと線が引かれ、その下には「英国 X」と記されている。経度がほぼ0度のグリニッジ子午線(かつての本初子午線)を示していると思われる。馬場助教は「この極運動の図のX軸は『グリニッジ子午線を基準にしていますよ』という意味になる」と説明する。


写真3=肖像画に描かれている極運動の図。図の下に「英国 X」や「Carloforte」の文字がうっすら見える

 グリニッジ子午線から少し右斜め方向に引かれた線の下には「Carloforte」と記されている。イタリアの緯度観測局が置かれたサン・ピエトロ島のカルロフォルテのことだ。「橋本氏は、当時観測所にあった掛け図をかなり正確に描いている」(馬場助教)。
 「所長室」には、文化勲章(1回目の受章)や英国王立天文学会からのゴールドメダルが展示されている。メダルのほか、館内には木村博士が幼少期に記した書や愛用のステッキも飾られている。


写真4=水沢図書館に保管されている文化勲章の原物

 だが、これらは複製品。原物は水沢図書館に保管されている。記念館が無人施設であることや、明治期の木造建築物ゆえに温度や湿度の管理が難しいためだという。
 同図書館では、入り口左側にある展示コーナーで公開しているが、ちょうど図書館主催の企画展で場所を使用しているため館内別室に引き下げており、現時点では見ることはできない。
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