人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

ILC誘致に関係する一社法人、貸借対照表 公告せず

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tanko 2020-10-11 8:10
 素粒子実験施設・国際リニアコライダー(ILC)の誘致推進に関わる一般社団法人「先端加速器科学技術推進協議会(AAA)」が、法律で定められている貸借対照表の公告を発足以来していなかった。報道機関からの指摘を受け今月上旬発覚。ホームページ(HP)に6年分の貸借対照表を含む決算報告書、総会議事録をまとめて掲載したが、会員からの指摘を受け、現在は公表義務のある貸借対照表のみ公開している。本紙の取材に対し、9日夕、AAAからメールで回答があり、公告していなかった事実を認めながらも、閲覧不可にした資料に係る質問は「公告義務がないので回答を控える」とした。
 AAAは2014年に設立。英字略称の表記から「トリプルエー」とも呼ばれている。
 ILC計画と日本誘致実現のため、ILC関連の技術開発、社会周知を図る広報活動を展開。広報活動では講演会の開催のほか、人気キャラクター「ハローキティ」を利用したオリジナルグッズの販売も手掛けている。
 製造系の大手企業や大学・研究機関が主な会員。2月1日現在、民間企業が中心の正会員が112社。大学などが中心の賛助会員が41機関となっている。
 役員の多くは製造大手や大学・研究機関の関係者。会長は三菱重工名誉顧問の西岡喬氏、副会長は岩手県立大学長で素粒子物理学者の鈴木厚人氏が務める。名誉会長はノーベル物理学賞受賞者の小柴昌俊氏。最高顧問には国会のILC議連会長を務める元官房長官の河村建夫氏(衆院山口3区)、特別顧問には元岩手県知事の増田寛也氏らが名を連ねる。
 貸借対照表を公告していなかった事実は、報道機関の指摘によって明らかになった。「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」の第128条では、定時社員総会の終結後遅滞なく、貸借対照表を公告しなければならないとしている。
 さらに同条第3項では、不特定多数の人が見られる状態にする必要があると規定。これらに違反した場合は、100万円以下の過料が科せられる。AAAはHPにデータを掲載してはいたが、会員だけが知るパスワードがないと見られない状態だった。
 AAA事務局長の松岡雅則氏(三菱重工)は本紙の取材に対し、「HPの改修が適切に行われていなかった。管理不足であったと反省している」と釈明。法律の公告義務は認識していたといい、「HPの運営に関して、管理体制が不十分であったと反省している。早急に体制を整え、再発防止に努める」としている。会員にはメールで謝罪したという。
 AAAは報道機関の指摘を受けた直後、貸借対照表のほか各種決算関連書や総会議事録もHPに公表したが、現在は公告義務がある貸借対照表のみ掲載。松岡氏は「会員から公開すべきでない資料(総会議事録等)も公開しているとの指摘があり、公告が必須となっている貸借対照表のみに訂正した」と説明する。
 本紙は閲覧不可能になる前の段階で、公告しなかった事実関係の確認のほか、各年度の決算関連資料などを基に、科目の意味や寄付・協力金の提供元に公共団体があるかなど複数の質問を投げかけていた。しかし松岡氏は「本来、公告義務のない収支報告書に対する質問なので回答を控える」とした。
 奥州市ILC推進室によると、AAAに対する支出はないという。
(児玉直人)
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