ブラックホール研究の英独米3氏にノーベル物理学賞(天文台水沢・本間所長「大きな弾み」)
- 投稿者 :
- tanko 2020-10-8 10:20

ノーベル物理学賞を受賞した3人の研究成果を解説する本間希樹所長
今年のノーベル物理学賞受賞者が日本時間の6日夜に発表され、ブラックホール関連の研究に貢献した欧米出身者3人が選ばれた。昨年、ブラックホールの“撮影”を成功させた国際研究チームの中心的メンバーで、国立天文台水沢VLBI観測所の本間希樹所長も3人の受賞を祝福。天文学の分野から2年連続で同賞受賞者が選ばれること自体異例で、自身が進める研究の原点とも言える理論や観測に対する評価だけに、喜びもひとしおだ。「ブラックホールがいかに大事な研究対象であるかを認めてもらった。われわれの励みにもなる」と話す。
(児玉直人)
受賞したのは、イギリス出身のロジャー・ペンローズ氏(89)=オックスフォード大学名誉教授、ドイツ出身のラインハルト・ゲンツェル氏(68)=マックス・プランク地球外物理研究所博士、アメリカ出身のアンドレア・ゲッズ氏(55)=カリフォルニア大学ロサンゼルス校教授=の3人。
ペンローズ氏は1965年、ブラックホールの中心部にある「特異点」の存在を示した人物。この世にブラックホールが形成される事実を理論的に証明した。
一方、ゲンツェル氏とゲッズ氏は、1990年代後半から2000年代初頭にかけ、太陽系が属する天の川銀河(銀河系)の中心部を観測。中心部の天体の動き方から、太陽の約400万倍の質量を持つ強い力が作用していると結論付けた。その強大な力の根源とされるのが、巨大なブラックホールであると天文学者の間では言われてきた。
本間所長は3人の研究成果について、「私たちが進めている研究分野の先駆けとなる成果を打ち出した人たち」と功績をたたえる。受賞者の発表に臨んだノーベル物理学委員会のデヴィッド・ハヴィランド議長が、「(ブラックホールは)将来の研究を動機付ける謎をもたらしている」と語っていたことに触れ、「私たちの研究の追い風になる」と期待を膨らませる。
本間所長が所属する国際研究チームでは、昨年4月に画像を公表した「M87銀河」のブラックホールに加え、ゲンツェル氏、ゲッズ氏が予言した銀河系中心部のブラックホールの撮影にも取り組んでいる。既に電波望遠鏡による観測は終了しており、解析の真っ最中という。
今回の受賞は、本間所長ら水沢駐在の研究者らにとっても驚きだった。物理学賞ではここ数十年来、素粒子・宇宙分野と物性分野の研究者が交互に選ばれていた。昨年は天文分野が受賞しており、「今年は天文はない」と思われていた。
受賞発表と同時に、本間所長や観測所の広報担当には、全国の報道機関などから取材依頼が殺到。昨年4月に発表されたブラックホール撮影成功、さらには今年の観測所運営予算の大幅削減問題でも各メディアが大きく取り上げたことも大きい。3人の受賞者の所属機関ではないが、国立天文台も7日、公式ホームページに祝意を伝えるトピックスを掲載。本間所長のほか、同天文台の上部組織・自然科学研究機構の小森彰夫機構長のコメントも紹介している。