人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

天文台を救え(コラム・時針)

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tanko 2020-9-13 9:50
 私たちの住む地球は、「天の川銀河」の中の太陽系に存在する。地球は約45億年前に生まれた。宇宙は約138億年前にできた。きっかけは「10のマイナス34乗」の大きさの何かが爆発したためだ。
 その宇宙最初の爆発が「ビッグバン」。爆発の影響で宇宙は広がり続けている。宇宙に欠かせないのが「ダークマター(暗黒物質)」と「ダークエネルギー(暗黒エネルギー)」の存在だ。銀河は強い重力でモノをかき集める力を持つ「ダークマター」、宇宙は広がりの力になる「ダークエネルギー」のおかげで成り立っている。
 どちらも、光も電波も発しないナゾの存在だ。宇宙の全容を解明する研究が世界的規模で始まっている。日本では奥州市の「国立天文台水沢VLBI観測所」(本間希樹所長)の活躍が特に目覚ましい。
 2019年4月には、国際プロジェクト「EHT」に参加。世界で初めて巨大ブラックホールの姿を撮影した。今年は、太陽の25倍以上ある大質量星団の「赤ちゃん星」から上下に釣り鐘状に噴き出すガスと周辺を回転するガスを日韓共同観測で明らかにした。大質量星団でも、太陽のような小質量星と同じプロセスで星が形成されることが示された。
 先月末には、同観測所チーム代表の赤堀特任研究員が「ほうおう座銀河団」の中心部から誕生間もないジェットを観測したと発表。ジェットが銀河団のガスの冷却を抑制すると考えられてきたのだが同銀河団のガスは冷えており定説を覆した。
 水沢天文台のVERA望遠鏡は、世界と協力し合い銀河の中の巨大ブラックホールの姿を捕らえる「SKA」計画の貢献装置にも認められた。しかし、来年度の運用のための予算にめどが立たないことが判明。銀河系の立体地図を作る「VERAプロジェクト」に区切りを付けるなど、研究計画の見直しを迫られている。天文台の危機を救おう。現在、地元周辺都市で運用継続を求める署名運動が行われている。
(吉)
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