人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

核ごみ処分場(コラム・時針)

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tanko 2020-9-12 18:20
 原発から出る核のごみ(高レベル放射性廃棄物)の最終処分場選定に向けた文献調査に北海道寿都町が応募を検討しているという。道知事や周辺の町村長は拙速過ぎると反発を強めているが、同町の片岡春雄町長は「反対意見は覚悟している。地元以外からの声に耳を貸すつもりはない」と強行姿勢である。
 核のごみは、使用済み核燃料を再処理してプルトニウムやウランを取り出した後の廃棄物で、国は2000年に法律を制定し、地下300mよりも深い地盤に埋める地層処分を決めている。建設までの流れは「文献調査」「概要調査」「精密調査」の3段階で約20年を要する。「施設建設」に10年を見込んでいる。
 文献調査を受け入れると、最大20億円、概要調査は最大70億円の交付金が支給されるなど、寿都町のように人口が3000人にも満たない小さな町などは、悪化する町の財政を支える主要な選択肢であることも理解できないこともない。
 交付金を受け取ることは処分場建設に同意したとする意思表示に等しい。手を上げやすい「文献調査」という、ある意味では作為的で後戻りできない意味合いがあることをしっかりと頭に据え、慎重に検討すべきではないか。
 この町の地下には「核のごみ、高レベル放射性廃棄物が埋まっている」としたら、住民は不安でこの先長く住み続けられないのではないか。若い人たちは去り、やがては誰も住まない町になりはしないか。町の未来をともす光が見えないのだ。
 国は、原発の建設に際し、メリットを提示。実際、立地した町は多大な恩恵を受け、住む人々は原発を切り離すことができないほど生活と密着している。しかし、核ごみ処分場からは町の発展に結び付くようなメリットは思い浮かばない。国は、応募する町と住民のことを真摯に考え、数万年から10万年という管理に向けた安全性の科学的根拠と、町の明るい未来を示す発展構想を提示すべきではないのか。
(紀)
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