人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

VERAは重要観測網(本間所長ら学習会で意義強調、石垣にもウェブ中継)

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tanko 2020-7-20 9:00

写真=VERA観測網について解説した本間希樹所長(右)と秦和弘助教。左手前のノートパソコンの画面には、ウェブ中継で聴講する石垣島の高校生たちが映っている=水沢南地区センター

 国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)で運用している天文広域精測望遠鏡「VERA」について理解を深める学習会が18日、水沢大鐘町の水沢南地区センターで開かれた。胆江地区の有志住民のほか、VERA観測局がある沖縄県石垣市の高校生もウェブ中継システムを使い参加。VERA観測網の重要性を説く本間所長らの解説に耳を傾けた。
(児玉直人)

 天文ファングループ「VERAサポーターズクラブ」(木村隆代表)が企画。本間所長と秦和弘助教が登壇した。
 本間所長は、観測所の歴史やVERA観測網の仕組みについて解説した。
 VERAは、水沢や石垣など4カ所の電波望遠鏡を連動させて一つの星を観測。地球が太陽の周りを公転することで、天体が見える角度に差が生じる「年周視差」を利用し、距離を正確に割り出している。このため、一つの天体の観測データを得るのに、1〜2年の時間が必要という。
 「私たち人間も左右の目の視差を利用して、物の位置や距離感を認識している」などと、身近なものを例に挙げ、観測のスケール感を分かりやすく解説した。
 同観測所の本年度当初予算が大幅削減された問題にも触れ、「国会の特別委員会でも議論になった。来年度以降の活動が確約されておらず、今後も天文台執行部と調整を図る予定だ」と説明した。
 奥州宇宙遊学館となっている緯度観測所2代目旧本館の保存活用と石垣島天文台の開設が、市民運動によって実現した成功例だと紹介。「VERA観測網の運用継続を求める動きも、市民、地元の皆さんの支援のたまものだ」と感謝の思いを伝えた。
 秦助教はVERA4局と中国1局、韓国3局の電波望遠鏡群との観測で得られたブラックホールから噴出する「ジェット」の画像を2枚紹介した。このうち1枚は、VERA4局のうち3局のデータを除外した状態の画像。8局の観測による画像と比べ非常に不鮮明だ。秦助教は「国際観測においても、VERAは非常に重要な役割を果たしていることが分かる」と強調した。
 水沢の観測所は、VERA観測網の拠点であり、国際プロジェクトに参加する研究員が滞在。さらに、理論研究に必要なスーパーコンピューター「アテルイ?」が敷地内に設置されている。「これらは、われわれの研究に必要な3要素。それが一つの研究施設内にあるのは日本でここだけだ」とアピールした。
 学習会を企画したサポーターズクラブは、同観測所やVERA観測網の維持を呼び掛ける署名運動などを展開。一方、今回ウェブ聴講した石垣市の高校生たちも、地元で署名運動を計画しているという。
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