人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

難しさ払拭、気軽に天体観察を(岡山のTOCOLが望遠鏡キット贈る)

投稿者 : 
tanko 2020-7-7 10:40

写真=望遠鏡キットを受け取る子どもたち。手前の三脚に取り付けられたのが、望遠鏡の完成品で筒の上にスマホなどを載せる台がある

 科学教育振興や教材開発などを手掛ける一般社団法人「TOCOL(トーコル)」(本部・岡山市と東京都渋谷区、山下リール代表理事)は、水沢星ガ丘町の奥州宇宙遊学館(中東重雄館長)を通じ、高性能手作り望遠鏡30台を胆江地区などに住む子どもたちにプレゼントした。贈られた望遠鏡は、従来の天体望遠鏡にあった設定等の煩雑さを極力なくし、誰もが気軽に楽しめるようにと同法人が開発。同館は、天文学に親しみを感じる機会になればと期待している。
(児玉直人)

 TOCOLは、立命館大学情報理工学部を中心に、産学官連携で教育振興やまちづくり、理科教材開発など多彩な活動を展開している法人。今回の取り組みは「千の星空☆プロジェクト」と銘打ち、自然災害や人口減少の影響を受けた地域に、計1000台の手作り望遠鏡を贈る事業。インターネットなどを通じた「クラウドファンディング」で事業資金を集め、寄贈を仲介する企業・団体・学校を全国から募集していた。
 宇宙を身近に感じられる天体望遠鏡での星空観察。しかし、本格的な天体望遠鏡を扱うには、一定の経験や知識が必要。精密部品を使っている上、重さもあるため、子どもが1人で設営するのは基本的に困難だ。また「体をかがませ、小さな接眼レンズに片方の目を寄せる」という体勢を取ることも、子どもや高齢者、障害がある人にとっては難しい。
 寄贈した手作り望遠鏡は、人間の視覚機能や光、色彩に関する研究を重ねてきた同法人が開発。誰でも利活用しやすくする「ユニバーサルデザイン」の概念を取り入れ、従来の天体望遠鏡が抱えていた設営・設定の難しさ、観察時のわずらわしさを可能な限り解消した。
 本体は厚紙を折り曲げて組み立てていく。スマートフォン(スマホ)やタブレット端末を取り付けると、画面を通して天体を見られる。弱視や白内障の人、高齢者や身体障害者の人でも大きな画面で、天体の様子を見ることができる。スマホでの天体撮影も簡単にでき、インターネット上への公開も容易になる。
 同館は、主催している星空観望会や科学教室などの“常連”となっている子どもたちに声を掛け、希望のあった4〜14歳に寄贈。5日夜に開かれた贈呈式で、同館サイエンススクールリーダーで、国立天文台OBの花田英夫さんが、一人一人にキットを手渡した。
 花田さんは「頑張って製作して、月や惑星を見て楽しんでほしい」と呼び掛け。市立水沢小学校3年の千葉朝陽君(8)は「月や火星を見てみたい」と張り切っていた。
 子どもたちに寄贈された望遠鏡キットは、市販もされている。詳しくは同法人が開設するウェブサイト( https://www.tocol.net/panda/ )へ。
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