人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

台長裁量で年度内延命、施設閉鎖の考え「ない」(国立天文台水沢・VERA)

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tanko 2020-4-3 10:10
 国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)のメイン事業VERA(天文広域精測望遠鏡)プロジェクトが、当初より2年早い今年6月で終了する見通しにあることについて、同天文台の渡部潤一副台長は2日、胆江日日新聞社の電話取材に応じ、台長裁量経費による補正措置で、6月終了から本年度いっぱいの運用に延ばす方向で模索していると述べた。同観測所の閉鎖を懸念する市民の声があることについては、「プロジェクトが変わっていくことがあっても、水沢のキャンパスを無くすというのは、話に出たことはない。水沢は非常に大事な場所だ」と強調した。
(児玉直人)

 同観測所が運用しているVERAは「銀河系の地図づくり」を進めている。銀河系の真の姿を明らかにするとともに、謎の物質「ダークマター(暗黒物質)」の解明などにも寄与する。水沢、入来(鹿児島県薩摩川内市)、小笠原(東京都小笠原村父島)、石垣(沖縄県石垣市)の4カ所に同一仕様の電波望遠鏡を設置しており、連動させることで実際に製造不可能な直径2300kmの電波望遠鏡で観測したのと同じ性能を発揮する。
 本間所長によると、プロジェクト終了と観測所予算の前年度比半減の措置が昨年12月、台長らをメンバーとする執行部から突如示され、3月26日付で正式な通知を受けた。本紙などによる一報を受け、市民からは水沢の施設閉鎖につながると心配する声があり、インターネット上では、プロジェクト終了に対して執行部の方針や、国の科学行政の在り方を批判する投稿などが相次いだ。
 渡部副台長は本紙の取材に「天文台予算は非常に逼迫しており、当初配分する予算がどうしても少なく、台長判断でこのような措置となったが、このままでは良くないと思っており、台長裁量経費で対応する考えだ。ただ、前年度決算などがまだまとまっていないため、どの程度補正できるか明確に示せていない」と述べた。
 当初配分の予算額では、6月に水沢を除く3局の運用が困難になるが、補正によって「何とか本年度いっぱいは続けられるようにしたい」と渡部副台長。しかし、当初の運用計画は2022(令和4)年度までとなっており、観測用の電波望遠鏡の耐用年数は10年以上残っている。来年度以降の方針が明確になっておらず、不安定な運営では人材の確保・育成の面にも支障がある。本間所長は「根本的な部分の解決にはなっておらず、この先も同じような問題で現場は混乱する」と危惧する。
 市民から、同観測所の閉鎖につながるのではとの懸念が出ていることについて、渡部副台長は「Z項発見の歴史があり、地域と観測所の協力関係は先進的なものがある。時代とともに、どうしてもプロジェクトの変化はあるが、そのことで水沢から研究者がいなくなり、キャンパスも無くなるということではない。執行部でも水沢を閉鎖しようという話をしたことがない」と理解を求めた。
 近く、同天文台の常田佐久台長が水沢観測所の研究者らに直接説明する予定。地元自治体などに対する説明について渡部副台長は「補正措置が決まってから、あらためてお話できれば」としている。
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