人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

ILC、文科省構想に申請へ(選定のハードルは高く)

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tanko 2020-2-22 11:10
 北上山地が有力候補地となっている素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」について、推進派の研究者サイドは文部科学省が策定する「学術研究の大型プロジェクトの推進に関する基本構想(ロードマップ2020)」に選定されるための書面審査に臨む見通しだ。日本時間21日、米国で行われているILC関連の国際会議で、文部科学省側がロードマップの審査対象であることを報告した。日本学術会議(山極寿一会長)の「学術の大型施設計画・大規模研究計画に関するマスタープラン(マスタープラン2020)」の策定作業の中で、ILC計画が「重点大型研究計画」を決めるための必要条件のヒアリングを受けていたことによる。ただ、過去の例を見ると、ロードマップ掲載計画は10件にも満たない上、重点計画と比べ審査要件のハードルも高く設定されている。
(児玉直人)

 ロードマップは、広範な研究分野コミュニティーの意向を踏まえながら、大型プロジェクトの優先度を明らかにするもの。学術会議マスタープランと同様、3年ごとに策定している。
 ロードマップに掲載される計画は、マスタープランで「速やかに実施べきだ」と位置付けられた重点大型研究計画の中から選ばれてきた。しかし、前回(2017年)策定のロードマップからは、重点計画からの選定を基本としつつ、重点計画選定時のヒアリングを受け選外となった計画も申請できるように改定された。
 マスタープラン2020で、重点計画に選ばれたのは31件。ILCのように、ヒアリングを受けながらも選定から外れた計画は28件ある。
 ロードマップにかかる審査や策定作業は、文科省科学技術・学術審議会の中に設置される「学術研究の大型プロジェクトに関する作業部会」が担当。大学教授ら専門家を委員とするメンバーが、書面審査とヒアリング審査によって掲載計画を決める。書面審査でヒアリング審査を行う計画を30件以内に絞り込む。ロードマップに掲載される計画数の目安は示されていないが、前回策定時は、ヒアリング対象は20件で、最終的に7計画が掲載された。
 書面審査は、3月に3週間程度の期間を設け実施。▽学術的意義▽妥当性▽戦略性▽緊急性▽社会や国民からの支持――など八つの観点ごとに▽A…基準を十分に満たしている▽B…基準をおおむね満たしている▽C…不十分な点がある――の3段階で評価する。
 このうち、社会や国民からの支持については、具体的に「計画の意義・必要性について説得力をもって説明することができるか」「長期間にわたり巨額の国費を投入することについて、社会や国民に支持していただけるか」「地域社会の行政および住民との信頼関係が構築されているか」をチェックする。
 観点別評価を踏まえ、総合評価として▽A…ヒアリング対象とする▽B…ヒアリング対象としない――の評定を付す。4月上旬までに開く合議審議で?総合評価Aの委員の割合が高い?観点別評価でC評価がない――を条件に、ヒアリング対象を選定する。
 マスタープラン重点計画も、ILCのような重点計画以外の計画についても、同じ評価観点で審査する。ただし、重点計画以外の計画は「特段に優れているかどうか」がポイントとなる。また合議審議では「総合評価Aの委員割合が50%以上で、他計画と比べ顕著に割合が高いこと」などとされており、選定基準のハードルが高くなっている。
 日本時間の2月21日、米国で開催されているILC関連の国際会議「国際将来加速器委員会(ICFA)」で、出席要請を受けた文科省は昨年3月以来となる公式の政府見解を発表。マスタープラン重点計画のヒアリング対象だったILC計画が、ロードマップ審査を受けられる要件を満たしていることを報告した。
 同日の奥州市議会2月定例会一般質問では、佐藤郁夫氏が「重点計画には入らなかったが、ロードマップ申請の権利は確保されたことは大きい」とし、今後の市当局の誘致活動の考えをただした。
 小沢昌記市長は「全体として着実に前進していると思う。今後は財政面も含め、国際協議という次の段階に進むだろうが、関係団体と連携を密接にして実現に向け取り組みたい」と述べた。
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