人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

水沢のスパコンとAI、宇宙構造解明を後押し(京都大など分析ツール開発)

投稿者 : 
tanko 2020-2-6 14:30
 宇宙の構造を解明する分析ツールが、京都大学基礎物理学研究所の西道啓博特定准教授らの研究チームによって開発された。ツール開発には、国立天文台水沢キャンパス=水沢星ガ丘町=に一昨年3月まで設置していたスーパーコンピューター(スパコン)「アテルイ」と、同6月から運用中の後継機「アテルイ?」も貢献。両スパコンが3年の歳月をかけて計算したデータを人工知能(AI)に学習させることで、宇宙の進化や未知の物質などの解明がスピーディーに進むことになる。
 分析ツールの開発に携わったのは同研究所と、東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構、国立天文台の3機関。昨年10月8日付の天文物理学専門誌「アストロフィジカル・ジャーナル」(米国)に掲載されていたが、一般向けの情報公開に向けた準備を進め、今月5日、3機関同時に公表した。
 宇宙の構造や成り立ち、宇宙の進化に影響を及ぼしたとされる未解明の物質(ダークマター)やエネルギー(ダークエネルギー)を探る手法の一つとして、天体観測と物理理論に基づく計算データを照らし合わせることが極めて有効とされる。
 しかし、数十万から100万に及ぶ精巧な計算が必要。現在利用可能な計算資源を最大限駆使しても、実現するのは困難という。
 そこで西道特定准教授らのチームは、AIの一種である「機械学習」の方法を用いた。代表的な101種類の「架空宇宙」のデータから対応関係をAIに学習させ、理論予言を高速に行うことを可能にした。
 101種類のデータの作成に使用されたのが、スパコン「アテルイ」と「アテルイ?」。機器更新に伴う代替わりの節目を挟み、約3年かけて計算した。データの総容量は約300テラバイト。1テラは1兆倍の意味で、DVDにして約6万3300枚に相当する巨大なシミュレーションデータだ。
 同ツールを使うことにより、標準的なノートパソコンでも数秒以内に理論予測ができるといい、計算コストは約1億分の1に低減した。
 西道特定准教授は、「データ科学の手法の大きな可能性に手応えを感じている。この成果を応用し、現代物理学最大の難解とされるダークエネルギーなど、宇宙の根源的謎に迫りたい。本研究の手法は、多自由度を持ち計算コストが大きい自然科学・社会科学の諸問題に対して広く応用できるだろう」と期待している。
トラックバックpingアドレス http://ilc.tankonews.jp/modules/d3blog/tb.php/919

当ホームページに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての著作権は胆江日日新聞社に帰属します。
〒023-0042 岩手県奥州市水沢柳町8 TEL:0197-24-2244 FAX:0197-24-1281

ページの先頭へ移動