人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市西部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

ILC構成機器内のトリチウム水「外部排出しない」(KEKの道園教授)

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tanko 2019-10-6 10:40

写真=ILCの安全対策について説明するKEKの道園真一郎教授

 素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の安全対策を中心に、研究者らが説明する「ILC解説セミナー」は5日、前沢ふれあいセンター2階研修室で開かれた。高エネルギー加速器研究機構(KEK)の道園真一郎教授は、ILC構成機器の中で最も放射性物質が生成される「ビームダンプ」について、「装置内の水には放射性物質のトリチウム(三重水素)が蓄積するが河川などに排水せず、装置内で密閉循環して使う」と説明。実験終了後でも十分管理できる水の量であることや、トリチウムの放射能影響が及ぶ期間などを踏まえ、保管容器で保持しトリチウムが減るのを待つことになるとした。(児玉直人)

 同セミナー開催は昨年9月と今年3月に続き3回目。東北ILC準備室(室長・鈴木厚人岩手県立大学長)とKEKが主催。市内外の住民25人が参加した。説明や質問回答には道園教授のほか、東京大学素粒子物理国際研究センターの山下了特任教授ら、ILC計画を推進している研究者や県担当職員ら7人が当たった。
 道園教授は、住民不安の対象となっている放射線や放射能に重点を置き解説。放射能を持っていなかった物質が放射能を持つようになる「放射化」の定義など、安全対策を理解する上で必要な理学の基礎知識についても触れた。
 ビームダンプは、ほぼ光速に近い状態に加速された電子や陽電子を水に吸収し安全に止める装置だが、ILC構成機器の中で放射性物質が最も生成される場所。電子用と陽電子用の2基が用意され、1基当たり約50tの水(鉄道用石油タンク貨車1両分相当)で内部を満たす。生成される放射性物質は、半減期(放射能が半分になる期間)が12.3年のトリチウム。ILCを、当初計画に示された20年間休まず稼働させた場合、2基合わせて最大100兆ベクレル(0.3g)のトリチウムが蓄積されるという。
 道園教授は「排水可能な濃度まで希釈するには160万t以上の水が必要で現実的ではない。排水せず、管理された装置内で循環使用する。実験終了後も十分管理できる量なので、保管容器で保持してトリチウムが減るのを待つことになる」と説明。国が計画している「研究施設等廃棄物の埋設事業」への引き渡しも視野に入れていると紹介した。
 このほか、地震や停電時の対応についても説明。電力が失われれば、放射化を起こすビーム自体が止まるため「電源喪失で放射能事故になる心配はない」とした。
 質疑応答で住民男性の一人はトリチウム水の安全性に関して、専門家でも意見が分かれているとの話を例示し、「福島の原発事故以降、このような対策や専門家に対する信頼は崩れており、『安全だ』『不安だ』と二つの見解が示されれば、不安のほうにどうしても気持ちが傾いてしまう。安全第一でお願いしたい」と指摘。合わせて県側に「高レベル放射性廃棄物処分場にはしないと言っているが、もう少し踏み込んだ形で受け入れない姿勢を示してほしい」と注文した。
 同日は一関市川崎町でも同じ内容のセミナーが開かれた。
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