人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

ILC誘致へ明確な意思を (東北推進協、政府に求める決議文採択)

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tanko 2019-7-2 10:20
 【仙台市=児玉直人】素粒子物理学の大型実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の誘致を進めている、東北ILC推進協議会(共同代表=大野英男・東北大学総長、高橋宏明・東北経済連合会名誉会長)は1日、仙台市内のホテルで総会を開き、本年度事業計画などを原案可決した。今年3月、都内で開かれたILC関連の国際会議の席上、文部科学省が初めてILC計画に関心を持っているとの意向を表明。誘致関係者はILC実現に向けた前向きな姿勢と捉えており、日本政府に対し「早期にILC誘致に向けた、より明確な意思表明を」との決議文も採択した。

 総会には岩手、宮城両県の知事や北上山地周辺自治体の首長、素粒子物理学者、経済団体、民間誘致団体の関係者ら190人が出席した。
 議事に先立ち、大野共同代表があいさつ。「ILCは、日本学術会議が策定する『学術の大型施設計画・大規模研究計画に関するマスタープラン』掲載に向けた検討の俎上にある。6月21日に閣議決定した政府の『骨太の方針』に、ILCなどを示唆する文言が示されたのは大きな一歩。3月7日の文科省による『関心表明』以降、着実に前進している」と述べた。
 議事では、直近の動向について同協議会事務局が説明。ILC実現に向けた国内課題として?日本政府の明確な意思表明?国家的プロジェクトへの位置付けと財源スキーム(計画)の検討?経費負担を見据えた国際協議の本格化?国内科学コミュニティーの理解と国民支持の獲得――の4項目を示した。
 学術会議のマスタープラン策定や欧州素粒子物理戦略の決定が予定される中、同協議会は「誘致決定に向けた国の段階的手続きの重要局面を迎える」と認識。同協議会内に設置していた「東北ILC準備室」と、同協議会本体の予算と事業計画を本年度から一体化し対応を強化する。
 具体的には、同準備室メンバーの協力を受け、広報活動強化による国民理解の醸成、立地候補地の受け入れ態勢整備など3事業を「特別事業」に位置付けて推進。日本学術会議から指摘された課題の解消策を講じ、政府決断を促す流れを構築する。
 総会後は、高エネルギー加速器研究機構(KEK)の山内正則機構長によるビデオメッセージ上映や、「ILC100人委員会」代表世話人を務める、前岩手県知事の増田寛也氏(東京大学公共政策大学院客員教授)が講演した。
 山内機構長は、日本学術会議における議論の経過や、今後のマスタープラン策定に向けた流れに触れた。「学術的な意義は一定の理解を得たが、ご批判や宿題もいただいた。できるだけ丁寧に、特に資金的な問題が生じない点をしっかり説明し、徐々に理解を得たい。学術会議の結論には予断を許さないが、できる限り理解を求める活動に力を尽くしたい」と決意を示した。
 増田氏は「ILCと地方創生」と題し講演。人口移動のデータを示しながら、東京一極集中の実情を説明した。ILCが「地方の魅力をアップする上で有力なツール」とする一方で、「学術界の中ですら多額の予算のILCにはさまざまな意見があるし、地方創生だけでILCを政府が正当化できるかとなると、力不足だ」と指摘。「国土計画のような高いレベルの計画の中でILCが位置付けられれば、国として進める正当性が得られるのでは」との考えを示した。
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