人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

反響の大きさ「予想外」(水沢VLBI観測所 本間所長)

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tanko 2019-4-20 12:20
 史上初のブラックホール撮影成功に、日本の研究者チーム代表として携わった国立天文台水沢VLBI観測所=水沢星ガ丘町=の本間希樹所長(47)は19日、胆江日日新聞社の取材に応じ、発表から1週間余り経過した今の心境を語った。当初は「たった1枚のぼやけた画像を見せたところで、本当にすごさが伝わるだろうか」と不安に駆られたが、予想以上の反響に驚いたという。所長就任4年目。単身赴任生活にも慣れ、水沢をすっかり気に入っている。本間所長は「何らかの形で地元のみなさんに貢献できるようなコラボレーションをしたい」と強調。世界とつながりながら、地域と共に歩む研究施設の理想像を追い求めている。(報道部次長・児玉直人)

 ■飛びついた「お茶の間系」
 今月10日午後10時に始まった発表会見は、約2時間続いた。ホテルに戻り「やっとゆっくりできる」と思ったのもつかの間。朝になると、テレビやラジオの取材依頼の電話がひっきりなしに入ってきた。会見に同席した、同観測所の秦和弘助教らと手分けして、テレビ局などを回った。
 「新聞やテレビの取材は、ある程度予想していたが、ワイドショーなどいわゆる『お茶の間系』からの出演依頼は想定外だった」と本間所長。芸能人が司会やコメンテーターを務める番組に出演した際には「説明が分かりやすい」「もっと話を聞きたい」と視聴者からの反応も上々だった。
 観測の過程や本間所長の人柄を取り上げる民放のドキュメンタリー番組も注目を集め、意外な反応もあった。レトロな雰囲気を醸し出す観測所の官舎で、本間所長がチョコシリアルを食べる場面が映された。シリアルを製造・販売する日本ケロッグが放送後、公式ツイッターで「歴史的な成功を導いた天文学者の先生にケロッグのシリアルをご愛顧頂き光栄」とコメントを寄せた。
 発表から1週間以上経過したが、「自分が取り上げられた番組や紙面を見切れていない」。講演依頼なども続き、同観測所の広報担当もスケジュール調整にてんてこ舞いだ。
 ■宇宙遊学館に来館者続々
 同観測所がある国立天文台水沢キャンパス敷地内の奥州宇宙遊学館。通常の土日は、大人の入館者は20〜30人前後だが、発表後最初の土日だった13、14日は倍近い人が訪れた。
 ブラックホール撮影の詳細を紹介するコーナーも、発表直後に急きょ用意。来館者の関心を集めている。
 受付で販売している天文グッズの売れ行きも好調で、本間所長が著した「巨大ブラックホールの謎」(講談社)は完売し、入荷待ち状態だ。「初めて来る人も多く、まさにブラックホール特需」とスタッフも喜ぶ。
 ■地元の応援大切に
 本間所長は、かねて「水沢の観測所は世界とつながっている」と話す。一方で、地元の市民や天文学に興味を寄せてくれる子どもたちの存在を特に大切に感じる。
 発表会見やメディアへの出演の際、本間所長の手元には黒い折り紙で作られたくす玉のような球体が置かれていた。地元の中学生が作ってくれたもの。3月に奥州宇宙遊学館で開かれた本間所長の講演会の際、持参したという。
 本間所長は、今回の発表を「水沢」「岩手」をアピールする絶好の機会ととらえている。現在、構想を膨らませているのは「ブラックホール大福」。「あんこをブラックホールにみたて、中心部に特異点となる何か黒い粒を入れる。あんこの周囲は中が見える透明な薄皮で包む。半分に切ったとき、ブラックホールの構造も分かる」と、ユニークな商品開発にまで思いを広げる。
 自身のさらなる研究や後進の指導も進めながらではあるが、「水沢や岩手を発信するのに役に立つのであれば」と話している。

写真=中学生から贈られた折り紙の「ブラックホール」を手にする本間希樹所長
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