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本間希樹観測所長 「水沢あっての成功」

投稿者 : 
tanko 2019-4-12 15:10
天文台の街 照らす輝き

 人類史上初のブラックホール撮影成功を伝えた会見から一夜明けた11日、研究プロジェクトに携わっている国立天文台水沢VLBI観測所の本間希樹所長は、テレビ番組への生出演などに追われた。多忙なスケジュールの中、取材に応じた本間所長は「水沢で長年培われてきた研究実績があって達成できたものだ」と強調。後進の若手研究者たちは、新たな研究目標へ向かって意気込みを新たにしている。緯度観測所開設から120年の節目を祝うかのように、「天文台があるまち」にとってうれしいニュースとなった。

 今回のブラックホール撮影は、遠距離にある複数の電波望遠鏡(パラボラアンテナ)が、一斉に同じブラックホールを観測した。VLBI(Very Long Baseline Interferometry=超長基線電波干渉計)と呼ばれるこの手法は、水沢では30年ほど前から実践されてきた“お家芸”のような技術。本間所長は「水沢で培われた経験が今回の成功の根底にある。そのことは、地元の皆さんにぜひ伝えたい」と語る。
 水沢キャンパス内にある20m電波望遠鏡「VERA」は、今回のブラックホール撮影には使われていないが、東アジアVLBI観測網の一つとして、ブラックホールの新たな謎を解き明かす研究に生かされそう。10日の会見で登壇した、同観測所の秦和弘助教は「今回の撮影結果では、ジェット噴射という現象が観測されなかった。東アジアの観測網は、今回の観測網とは異なる波長で観測しているので、その謎に迫ることができるかもしれない」と期待を寄せる。解析には、同キャンパス内に設置されているスーパーコーンピューター「アテルイ供廚粒萢僂鮓込む。
  「世界の研究者が共同で一つの目標に向かって取り組んでいることに大きな意味がある。地域住民にも天文学や自然科学をより身近に感じる機会にしてほしい」と話すのは、天文台OBでNPO法人イーハトーブ宇宙実践センターの大江昌嗣理事長。同センターが運営する奥州宇宙遊学館では13日午後7時から、春の天体観測会を開催する。今回観測したブラックホールがある「M87銀河」の方向も見てもらう予定。このほかにも、今回の快挙を祝うような取り組みを検討する動きもあり、人類史上初の快挙は「天文台のある街」に活気を呼び込みそうだ。

学術施設と地域づくり 見つめ直す契機に
 「えっ、水沢の天文台の所長?」「水沢の天文台って、そんなすごい施設だったのか」。10日夜、ブラックホール撮影の記者会見がニュース番組やネット上に流れると、インターネット交流サイトには、こんな投稿が飛び交った。
 都内で開かれた会見では、研究者12人が関係者席に座った。このうち、本間所長をはじめ5人が水沢VLBI観測所の本拠地である国立天文台水沢キャンパス=水沢星ガ丘町=に勤務。ある天文台関係者は「おそらく、水沢で普段仕事をしている研究者がこのような大きな国際プロジェクトに携わっていること自体、知らない市民や県民の方は多いのでは」と語る。
 老朽化により、一時取り壊し寸前まで話が進んだ同キャンパス内の旧本館。熱心な市民運動の末、2008(平成20)年に奥州宇宙遊学館として生まれ変わった。このことは裏を返せば、歴史と実績がある天文台の存在に、市民も行政も、政治も無関心になりかけた場面があったということだ。
 県や市の行政機関、経済団体は素粒子物理学者らと連携して、素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の誘致に力を注ぐ。誘致による経済波及効果や地域振興、国際研究都市の創出に期待を膨らませ、震災復興の象徴にも位置付けている。
 新たな夢を追い掛けることは結構なことだが、120年前からこの地域に存在していた世界に誇る「宝」に対し、どのような姿勢で接してきたのか、今回を機に見つめ直してみてはどうだろう。謙虚な反省とそれを踏まえた実践こそが、新たなものに着手する際の大きな自信と力になるはずだ。
(報道部次長・児玉直人)


写真1=ブラックホール撮影に貢献した本間希樹所長。天文学普及のため、一般市民や子どもたち向けの講演やイベント参加にも積極的だ(昨年8月の「いわて銀河フェスタ」で)

写真2=東アジアVLBI観測網を駆使したブラックホール研究に挑む秦和弘助教(左)。中国からの留学生、崔玉竹(ツェイ・ユズ)さん(中)も、今回のブラックホール撮影に携わり、会見にも同席した
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