人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

ブラックホールを撮影(人類史上初の快挙)

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tanko 2019-4-12 14:50
水沢観測所の本間所長らも貢献


 天文学者らによる国際研究プロジェクト「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」は人類史上初めてブラックホールを直接撮影したと、日本時間の10日午後10時に全世界同時に発表した。国立天文台水沢VLBI観測所=水沢星ガ丘=の本間希樹所長(47)ら、同観測所に所属する研究者らも貢献。本間所長は11日、胆江日日新聞社の取材を通じ「水沢で培われてきた観測技術と実績がなければ成し得なかったこと。地域の皆さまの支えもあって、観測所があり続けてくれたおかげ」と感謝の言葉を寄せた。
(報道部次長・児玉直人)

 EHTは、日本の国立天文台など世界の研究機関に所属する、約200人の研究者で構成している研究プロジェクト。米国のハーバード・スミソニアン天体物理学センターのシェパード・ドールマン博士が代表を務めている。日本の研究機関に所属しているメンバーは14人。さらに海外の研究機関所属の日本人研究者も8人加わっている。本間所長は日本チームの代表として、EHTの理事会にも名を連ねている。
 ブラックホールは、アインシュタインの一般相対性理論によって、その存在が予言されていた。しかし光を発しないどころか、中に吸い込んでしまうほど強い重力を持っているため、月のように表面に当たった光の反射で存在を確認することすらできない。長らく直接撮影は困難とされていた。
 そこでEHTは、ブラックホールの周囲に生じる超高温のプラズマガスに着目。ガスから発する電波(光)は、ブラックホールの強い重力によってその周囲を回り込むように動き、やがてブラックホールの中に吸い込まれてしまう。吸い込まれた電波は二度と外に出てこられないため、「ブラックホールがある部分だけ影のように見え、ブラックホールが存在していることを証明できるのでは」と仮定した。
 EHTは、地球から約5500万光年離れた「M87銀河」と、約2万8000光年離れた「いて座Aスター」の2カ所に潜むブラックホールを対象に選んだ。
 観測は北南米大陸とヨーロッパ、南極、ハワイに点在する電波望遠鏡8基を連動させて実施。できるだけ遠く離れた複数の電波望遠鏡が、一斉に同じブラックホールを観測することで、実際に製造不可能な直径1万kmの電波望遠鏡で観測したのとほぼ同じ、精度の高いデータが得られる。
 10日夜に公表された画像は、M87銀河の中心部にあるブラックホールを捉えたもの。いびつな光の輪のように見えるのはプラズマガスが発した電波。その中央の黒くなっているのがブラックホールの影「ブラックホールシャドウ」だ。同日夜、日本の会見場所となった都内で解説に当たった本間所長は、「これが人類が初めて目にしたブラックホールの姿」とアピールした。
 今後は、さらに観測に参加する電波望遠鏡の数を増やす方針。加えて、水沢を含めた東アジアの電波望遠鏡観測網を活用するなど、さまざまな角度からブラックホールの謎、ひいては宇宙誕生などの解明に貢献していく考えという。

 小沢昌記市長のコメント 非常に興奮している。奥州市水沢の地において、緯度観測が開始されてから120年の節目を迎える本年に、国際的な観測チームの日本代表を務める本間希樹教授が、水沢VLBI観測所長であることにもご縁を感じ、市民を代表して敬意を表する。宇宙の謎を解明する一歩であり、さらなる発見・発展に期待したい。本市が推進する国際リニアコライダー(ILC)も宇宙の謎に迫るものであり、力強いエールをいただいた。

写真1=「M87銀河」中心部にあるブラックホールをとらえた画像。オレンジ色の輪の中央にある黒い部分がブラックホールの影。直径は太陽系がすっぽり入るほどの大きさ=(C)EHT Collaboration

EHTによるブラックホール撮影に使用された電波望遠鏡とその配置図=(C)NRAO/AUI/NSF
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