人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

「民の活力 導入不可欠」 ILC周辺研究都市整備で大村虔一氏

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tanko 2013-4-23 5:50
 【仙台市・児玉直人】 一般社団法人国際経済政策調査会(高橋佑理事長)主催の第餠回「加速器科学研究会」は22日、仙台市内のホテルで開かれ、東北ILC推進協議会の国際学術都市調査研究分科会メンバーなどを務める、元東北大学大学院教授の大村虔一(けんいち)氏が、ILC候補地周辺の都市整備と民間資本活用の方策について講演。大村氏は1兆を超えるともされるILC建設とその周辺都市の整備費用について「公的投資だけで負担するには無理な額」とし、公的事業に民間のノウハウを取り入れる「PPP」や「PFI」と呼ばれる手法導入の有効性を強調した。

 同調査会は、ILCの東北誘致を目指し同研究会を設置。都内のほか、近年は奥州市や仙台市内でも有識者を招いた講演会を開き、ILC誘致へ産学官の機運向上を図っている。この日の研究会には、誘致活動の推進組織や建設、土木関連企業の関係者ら約150人が出席した。
 大村氏は都市計画や官民連携の専門家としても知られる。冒頭、ILC有力候補地である北上山地の人口分布や集落の特徴などの資料を提示。「『山地』とはいえ、標高200m前後の場所が多く、山ひだの入り組んだところに集落が点在し、人の営みがある。自然の豊かさと既存の社会環境を生かし、無理のない研究都市は作れる」との見解を示した。
 都市整備を進める上で重要になってくるのは民間資本の活用。これまでに示されているILC建設費用は約8743億円で、半分余りの4843億円が建設国が負担する。これとは別に、研究者の居住環境や生活支援設備、道路網など周辺都市整備に約2890億円が必要とされている。
 「このほかにも付随して必要なものも出てくることから、総額はおよそ1兆3000億円ぐらいにはなる」と大村氏。「到底、財政が厳しいといわれる国や地方公共団体が負担できる規模ではない。コスト削減はもちろん、PPPやPFIといった手法により民間の力を導入する必要がある」と持論を展開した。現行行政の枠組みでは対応しきれいない規模のまちづくりになること、先進的なノウハウが求められることからも、民間活用が不可欠だという。
 「ILCに関連する都市整備には、収益性があるものと無いものが混在する。国際機関や国費によって整備すべきものあれば、民間資金を最大限活用した方がいいものもある。どの事業に民間力を導入するか、その場合の手法がどんなものがいいか、精査して行く必要がある」と訴えた。

 ≪PPPとPFI≫
 PPPは「パブリック・プライベート・パートナーシップ」(官民連携)の略。公共サービスに民間活力を導入すること全般を指す。民間委託や指定管理者制度、市場化テスト、公設民営方式、包括的民間委託も含まれる。民間資金を活用した社会資本整備「PFI」(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)も、PPPの中に含まれる官民連携手法の一つ。公共事業の設計や建設、維持・管理、運営に民間の資金とノウハウを活用。民間主導によって効率的、効果的な公共サービスの提供を図る。

写真=ILC周辺都市整備で、民間活力導入の必要性を訴える大村虔一氏
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