人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

水と放射線の影響は? (ILC候補地住民が研究者から説明受ける)

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tanko 2018-11-17 6:40
 北上山地が有力候補地となっている素粒子実験施設、国際リニアコライダー(ILC)について、建設想定エリアに住む一関市民らは16日、県庁でILC関連装置の開発に携わる研究者らと対談。住民らは放射性物質の処理や事故発生時の対応などについて説明を求めた一方、リスク説明や住民不安を払拭する姿勢が不十分だとして、行政側のこれまでの誘致運動の進め方を批判した。

 研究者と対談したのは、同市大東町の前一関市議菊地善孝さん(64)と農業金野弘記さん(53)、同市千厩町の自営業菅原佐喜雄さん(62)、盛岡市山岸の元高校教諭永田文夫さん(75)ら。菊地さんらは、ILC誘致の在り方に疑問を呈している市民団体「ILC誘致を考える会」のメンバーではあるが、今回は会の活動ではなくILC建設想定エリア近傍の地元住民の立場としての行動という。
 「考える会」では、勝部修一関市長への公開質問状提出や、東北ILC準備室主催のリスク説明会参加などを通じて、住民生活への影響や安全性について向き合ってきた。しかし、質問状の回答内容に納得できない部分や一度の説明会だけでは消化不十分との思いがあり、地元選出県議の高田一郎氏(共産)の紹介で今回の対談に至った。
 県庁8階会議室で行われた対談は約1時間半、非公開で行われた。終了後、会見した菊地さんらによると、茨城県つくば市の高エネルギー加速器研究機構(KEK)の照沼信浩教授と佐波俊哉教授、東北ILC準備室メンバーの立場で岩手大学の成田晋也教授と、県科学ILC推進室の佐々木淳室長らが対応した。
 ILCでは、ほぼ光速に近いビームにして電子と陽電子を衝突させる。しかし、衝突できなかったビームはそのまま通り過ぎ、「ビームダンプ」と呼ばれる装置に到達する。菊地さんらが懸念しているのは、ビームダンプ内でビームと水が反応して発生する放射性物質「トリチウム(三重水素)」。人体への影響は弱いとする見解もあるが、除去処理が難しいという性質もあり、福島第1原発事故の汚染水処理を困難にさせていることでも知られる。
 対談では、ビームと接する水(約100トン)は閉鎖空間の中で循環利用し、外部に漏れない設計にするなどの説明を受けたという。
 菊地さんは、研究者と直接会話できた点は評価しつつ「これで安心したというわけではなく、間違いなく彼らが対応するのかどうか、しっかり見ていく必要性はある」。さらに「誘致したいと思うあまり、リスクに関してほとんど説明してこなかった。行政の在り方としておかしい」と、これまでの誘致運動の在り方を批判した。
 菅原さんは「さまざまな立場の研究者の声を聞かなければ、全体像がよく分からないと感じた」。金野さんは「説明は理論的で納得できるところもあったが、もっと聞きたいことがある」。永田さんは「地元の疑問に、研究現場で活躍する研究者が真剣に聞いて答えてくれる一歩として今日の場はよかった。ただ、まだまだ私たちに大事なことが知らされていないと思う」と、地元住民への説明と十分な情報公開を訴えていた。
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