人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市西部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

【連載】熱願冷諦 ILC誘致、識者は語る(4)

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tanko 2018-10-22 9:30
リスク論からのアプローチ 
メリットに偏る報道も問題
住民知りたいのは「事後対応」

小松丈晃氏(東北大学大学院文学研究科・文学部教授)

 ――あらためて、ILC誘致活動にどのような印象や感想を持っているか。
 小松氏 繰り返しになるが、まだ十分にILCの誘致意義が市民レベルで認知され、理解されているとは言い難い状況にある。
 ILCを巡る報道を見ると、国内の経済効果や立地場所の選定、建設時に期待される成果に関するものが中心。リスクも含めたデメリット、特に市民生活や地元経済に対するリスクや対策はほとんど伝えてこなかった。市民団体等による公開質問状提出などの動きがようやく報道されるようになったが、バランスの取れた報道がなされてきたとは思えない。住民同士の対立構造が生まれるのは良くないが、それを避けようとするあまり、デメリットやリスクに触れなかったというのであれば、適切な対応とは言えない。
 一関の市民団体の公開質問状とその回答を見させてもらったが、例えば放射能事故について、市民団体の方々は「万一起こったときの対応」(事後対応)を聞いているのに、回答のほうは「起こらないようにするための対策」(事前対応)に終始しているように感じる。住民側と推進する側にすれ違いがあるように見受けた。




 福島第1原発事故を引き合いにすると、「事前対応」は十分考えられていても、それをすり抜けて起こる「事後対応」、つまりシビアアクシデント(原子力関連施設における大規模事故)が起こったらどうするかについては、ほとんど考えてこなかったという反省があった。多重防御をしても、スイスチーズのたとえがあるように、想定外という抜け穴があり得る。
 市民団体の方々の声には、「もし事故が起こったらどうするか」「起きた場合は付近の住民は避難する必要があるのか」といった事後対応を事前に考慮しておいてほしいという思いが込められていると思う。
(つづく)

写真=「先端加速器科学技術推進協議会」のホームページにあるQ&A集(上)と、一関市で9月に開催したリスク説明会で寄せられた質問に対する回答(下)。事故や問題が起きた場合の「事後対応」に関する記載内容は具体性が乏しく、「テロの標的にならないのか」との質問に対する解答に至っては、「絶対に起きない」とも解釈できる内容だ
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