人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

【連載】熱願冷諦 ILC誘致、識者は語る(3)

投稿者 : 
tanko 2018-10-20 19:00
リスク論からのアプローチ ?
子どもの参加 一長一短
教育と誘致活動は分けて

小松丈晃氏(東北大学大学院文学研究科・文学部教授)

 ――市民団体などの指摘事項の一つに「子どもたちを誘致活動に利用している」というものがあった。子どもたちが誘致事業に参加することのメリットや問題点とは何なのか。

 小松氏 ILC誘致をきっかけに、子どもたちの科学や宇宙に対する関心を高めていこうという目的自体は重要だと思う。
 子どもたちが素粒子や宇宙について自分の考えや思いを述べたり、英語で話すということは子どもたち自身はもちろん、親世代の人たちもILCに関心を向ける機会になる。親世代が地域に与える影響やメリット・デメリットについて問題意識を持つきっかけになる利点もある。

 ただ、子どもたちが何かに真剣に取り組んでいる姿というのは、一般的に「好ましい印象」を与える。そのために「ILCに良い印象を作り上げるための動員だ」と見られてしまう可能性がある。ILCの利点、問題点を冷静に議論することより、良いイメージづくりのほうを先行してしまうようなことがあってはいけない。着ぐるみの活用も、「教育のため」と明言できない要素を含んでいると思う。「印象づくり」「印象管理」と市民の側から指摘されるようなことがあれば、誘致推進にはかえって逆効果となる。
 事業を推進する側は「自分たちは『誘致活動』と『教育』をきちんと切り分けることができているか」「市民から印象管理のための動員だと見られる可能性の取り組みをしていないか」と絶えず自問し、子どもたちの参加の在り方を見直していく必要があるだろう。
(次回は22日付に掲載します)

写真=標準理論の素粒子をイラストで分かりやすく表現したパネルを見る親子。小松教授はILCを推進する関係者に対し、科学教育と誘致活動の違いを十分認識し、子どもたちの参加の在り方を常に考えていく必要があると指摘する
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