人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

ILC子ども科学相談室・38 宇宙の果ては、どうなっているの?

投稿者 : 
tanko 2018-9-7 18:20
 宇宙誕生の謎に迫る国際リニアコライダー(ILC)ですが、誕生や終わりと同じぐらい謎なのが「宇宙の果て」です。地球を飛び出したら、どこまで宇宙空間は広がっているのでしょう?


二つの仮説が示されています
 宇宙の果てに関する二つの仮説を説明する前に、「遠くの星を見る」とはどういうことなのかを考えてみましょう。
 夜空に輝いて見えるほとんどの星は、太陽と同じように自ら光を放っている「恒星」と呼ばれる星です。月や火星、木星も光って見えますが、太陽の光を反射しているだけで、自分で光っているわけではありません。
 夜空の星の「光が見える」ということは、その天体が発した光が地球に届いたということです。
 この連載でも過去に説明しましたが、この世で最も速いのは「光」です。光の速度(光速)は秒速約30万kmです。しかし宇宙にある多くの天体は、非常に遠い場所にあるので、光でさえも何年、何百年、何千年もかかって私たちのところに届きます。光が1年かかって進む距離を1光年といいます。
 例えば、1万光年離れた天体を考えると、1万年前に天体を出た光が宇宙空間を飛び続けて、やっと地球に届いたのです。つまり私たちが今見ている天体の姿は、その天体の1万年前の姿になります。
 宇宙が誕生したのが138億年前だと言われています。なので、138億光年より遠いところを見ようとしても、そこには天体どころか宇宙そのものが存在していない。何もないと考えられています。したがって宇宙のどの方向を見ても、138億光年の距離が「宇宙の果て」だと言えます。
 さて、その宇宙の果ての「外側」には何があるのか。現代の物理学では二つの仮説があります。
 一つは「開いた宇宙」と言われるものです。宇宙空間は、無限の空間の中でビッグバンが起きてできたので、無限の空間の中にいる宇宙自体に「果て」などは存在しない、という説です。
 もう一つは「閉じた宇宙」と言われるものです。例えば、ボールの表面をなぞっていくと、当然またもとの位置に戻ってきます。そして、ボールの周囲を無限に回り続けることができますが、ボール(宇宙)自体の大きさは「有限」であるというイメージで、現在宇宙は膨張しているものの、永久に膨張していくのではなく、ある時から収縮に転じ、最後はゼロとなる。その収縮に転じた地点が、「宇宙の果て」という考えです。
 しかし、二つの仮設に対する明確な答えは、今のところ見当たりません。
(奥州宇宙遊学館館長・中東重雄)

番記者のつぶやき
 大昔の人たちは、「海の向こうはどうなっているのか」「広々とした大地の向こう側には誰がいるのだろうか」と想像を巡らせました。まだ科学的な研究や理論というものが確立していない、そして飛行機や遠洋航海が可能な船舶がなかったころの時代です。
 古代には「地球は真っ平だ」と唱える説も存在していました。もちろん、現代を生きる私たちは球体であることを常識的に知っていますが、当時の人たちはあれこれと思案しながら自分たちの暮らしている場所について考えたことでしょう。実は現代でも「地球は丸くない」と信じている人がいるそうで、「地球平面協会」という団体もあります。
 さて、宇宙に果てはあるのかないのか、宇宙の外側はあるのかないのか。この謎の解明にはどれくらいの時間がかかるでしょうか。
(児玉直人)

画像=はくちょう座を構成する主要な星までの距離を示した図。数字の単位は「光年」。同じ平面に描かれているように見える星座ですが、地球から一つ一つの星までの距離はばらばらであることが分かります
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