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【連載】ILC子ども科学相談室・37「ビッグバンが起きる前は何があったの?」

投稿者 : 
tanko 2018-8-31 9:40
 国際リニアコライダー(ILC)では、宇宙誕生時の大爆発「ビッグバン」直後の宇宙の状態を再現するそうですが、ビッグバンが起きる前の宇宙とはどんな姿だったのですか? 何があったのでしょうか?

答えがまだわからない問題です

 「ビッグバンの前は何があり、どんな様子だったのか?」という謎は、単純な疑問でありながら、答えを出すのは非常に難しいものです。
 現在、世界中の天文学者、宇宙学者、物理学者たちが「こうではないか? ああではないか?」と議論したり、理論を出したりして研究を続けています。残念ながら、今の時点では「こうでしょう」と学者の皆さんが認めている学説(考え)はありません。つまり、まだ明確な答えが見つかっていないのです。
 しかしながら、現在最も有力な考え方として知られているのが、日本の宇宙物理学者である佐藤勝彦・東京大学名誉教授や、アメリカの宇宙物理学者アラン・グース氏が相次いで提唱した「インフレーション理論」があります。
 この理論は宇宙の異常な膨張が、宇宙が誕生した10のマイナス36乗秒後に始まり、10のマイナス34乗秒後に終了したという現象について述べたものです。


 「10のマイナス36乗」というのは、「0」と小数点を書いた後に「0」を35個並べ、最後に「1」を付けて表現した数値です。要は、とんでもないわずかな時間の中で「宇宙の異常な膨張が起きた」というのです。この異常な膨張によって宇宙は「火の玉」になったと考えられています。
 具体的にどれくらい宇宙が膨張したのかというと、インフレーション前の大きさは、直径が10のマイナス33乗cmだったと言われており、物質をこれ以上こまかくできない究極の粒子「素粒子」よりもはるかに小さい大きさです。それがインフレーション直後、いわゆる「ビッグバン」の時には直径1cm程度になっていたと考えられています。
 この理論では、最初の宇宙は「無」から生まれたと考えられています。物理学的に「無」とは「ゆらぎ」のある状態のことをいいます。ちょっと難しいですが、別の言い方をすると、「物理的に可能な限りエネルギーを抜いた状態」のことをいいます。実は量子物理学では、エネルギーを抜くだけ抜いても「振動」、すなわち「ゆらぎ」は残るのです。このような「ゆらぎ」によって宇宙が生まれたり、消滅したりしています。「無」と「有」の間を行ったり来たりゆらいでいる状態です。
 そのような状態から「トンネル効果」という特別な効果(現象)によって、突然パッと現在の宇宙が生まれたのではないか、と考えられています。これはウクライナ生まれのアメリカの物理学者アレキサンダー・ビレンキン氏が唱えた説です。
 このように「宇宙は無から誕生し、インフレーションという爆発的な膨張によって火の玉となり、ビッグバンという再度大爆発が起きた。その後、膨張し続けている」と考えられていますが、これ自体、完成された理論ではありません。これからの研究に期待が寄せられています。
 現在の宇宙に存在するすべての物質は、ビッグバン時代につくられた莫大(ばくだい)なエネルギーがもととなっています。ビッグバンによって、素粒子ができ、それによって陽子や中性子ができ、さらに電子を取り込んで原子となり、物質の生成が進んでいきました。それが「宇宙の晴れ上がり」と呼ばれる状態で、宇宙創成から約38万年後のことです。光が直進できるようになり、その後数億年たって星もでき、銀河や銀河団が形成され、私たち人間などの生物がつくられていったのです。
(奥州宇宙遊学館館長・中東重雄)

番記者のつぶやき
 あまりにも巨大な数のことを「天文学的な数値」というように言うことがあります。果てしなく広がっているような宇宙や天体までの距離、巨大な星の質量などは、日常生活で使っている数値をはるかに超える大きさですから、そのようなたとえが誕生したと思います。
 一方で、素粒子物理学者などは宇宙誕生直後のわずかな時間とか、素粒子の大きさなど、非常に小さな世界を研究の対象にしています。ところが、こうした目に見えない小さなものやわずか一瞬の出来事を「素粒子物理学的数値」と表現するかというと、そうでもありません。天文学のほうが、一般的になじみがあるということなのでしょうか? 「いや、決してそんなことはない」と、素粒子物理学者の方は心の中で思っていることでしょう。
 桁数が多くて書ききれないために、接頭辞(せっとうじ)という言葉をつけて、桁数を省略する表記をすることがあります。「キロ」や「メガ」「ギガ」「センチ」「マイクロ」などは、皆さんもよく聞くことがある代表的な接頭辞です。(児玉直人)
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