人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

ILC誘致活動は地域愛や夢育む契機(市民団体公開質問に勝部一関市長)

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tanko 2018-9-4 9:30
 北上山地が有力候補地となっている素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」に関連し、「ILC誘致を考える会」(共同代表=千坂げんぽう(※)氏、原田徹郎(てつお)氏、会員約50人)が一関市の勝部修市長に提出していた公開質問状の回答が、このほど同会に届いた。誘致活動に子どもたちを利用しているとする趣旨の指摘に、勝部市長は「ILCをきっかけに地域に愛着を持ち、将来への夢と希望を持てる環境を提供するためで、市の責務として重要な取り組みだ」と理解を求めた。一方、放射線管理や施設構造など安全面に関する疑問には、東北ILC準備室(室長=鈴木厚人県立大学学長)など専門家の見解で対応。千坂、原田両氏は「市民に対しメリットを伝えているのに、なぜデメリットは自ら言葉で説明できないのか」としている。同会は5日、再質問書を提出する。

 同会は、一関市民を中心とした市民団体。質問状は▽放射化する地下水・空気・施設への対応▽核廃棄物処分場への転用懸念▽地元負担と経済効果▽自然災害や工事残土、電力への対応▽地元の雇用不安▽誘致運動への子どもの参加と大人の責任――に関する各項目で構成。8月24日に勝部市長宛てに提出した。
 千坂氏や原田氏によると、勝部市長名の回答は提出期限の同31日付で届いた。勝部市長が直接回答したのは▽放射性廃棄物最終処分場になる恐れに対する市の見解▽市のこれまでのILC関連支出額▽市のILC誘致による負担額と経済効果額▽市内雇用への影響▽子どもたちと誘致活動のかかわり――に関する事項だった。
 このうち、子どもたちと誘致活動について同会側は、ILCのデメリットについてよく理解しないまま、子どもたちを誘致運動に参加させていることへの市の責任について見解を求めていた。
 勝部市長は、研究者らによる講演会や特別授業では、ILCが放射線発生装置であることも伝えていると強調。「ILCが実現することを見据え、地域を学び発信する事業などは、地域への誇りや愛着につながる。子どもたちが描いた(ILCに関する)絵は、自分たちの将来のまちづくりの夢を描いたもの。児童・生徒への取り組みは、将来への夢と希望を持てる環境を提供するためであり、市の責務として重要」との考えを示した。
 放射性廃棄物最終処分場に転用されるとの懸念には、市として受け入れを明確に拒否しているとし「今後もその姿勢は変わらない」と断言。受け入れ拒否の姿勢をあらためて明確にすることについては「県の動きと協調しながら対応を進めていきたい」としている。
 同市が2011(平成23)年度から7年間、誘致関連事業に投じた経費は総額8883万1000円。地元負担になるとされるILC施設周辺の道路や地域環境の整備に対する負担額については、中央キャンパス(研究所)などの場所が決まっておらず「明確に答えることは困難」とした。
 実験に伴い発生する放射線や放射性物質の管理については「市民が安心して実験を見守っていけるよう、十分な対策が講じられるよう注視する」とした上で、「対策については専門的立場からの回答が適当である」とした。同市市長公室は、産学官のメンバーで構成する東北ILC準備室などの意見を集約した回答文書を、市長回答文書と同じ日に別便で送付した。
 同会共同代表の原田氏によると、集中豪雨など自然災害発生への対策も含め、全回答の6割が専門的立場からの回答だったという。原田氏は「デメリットに関する市民目線の質問に、市長自ら回答できないというのは残念」。子どもの誘致活動参加に対する責任についても「有効性を説明しているだけで、責任の在り方には触れていない」と指摘した。
 同会は5日、同市長宛てに再質問書を提出。県への公開質問の実施も検討している。

写真=ILC誘致に期待を寄せる子どものメッセージが描かれたのぼり旗(資料)

※注釈…千坂氏の名前の漢字表記は、山へんに諺のつくりで「げん」、峰で「ぽう」
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