人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

≪短期連載「私とILC〜3」≫ 東北の夢、描きませんか(増田寛也さん)

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tanko 2013-4-12 9:10
 野村総合研究所顧問や日本創成会議座長を務め、公共政策の観点からさまざまな提言をしている増田寛也さん(61)。岩手県知事を退いて6年経過した今でも、県民の間には一定の知名度がある。そんな増田さんの公式ホームページを開くと「夢」の文字が表示される。「ILCにはノーベル賞クラスの学者が家族と共に集まる。彼らと交流することで、地域の若者たちも国際的な感覚を自然と養い、やがて世界で活躍できる人材となる。そんな夢を描けるプロジェクトがILCだ」と語る。
 増田さんが最初にILCを知ったのは、知事就任間もない1995年。「県北の安比で素粒子物理学の学会があり、そこで初めてILCの前身計画である『JLC』のことを知った。これが日本に実現できたら、地域の発展に寄与するだろうと感じた」
 心の底から湧き上がる期待。しかし、それを公言できなかった。「情報が流出して、自治体間の誘致競争が過熱化するのを防ぐためだった」と増田さん。学術的根拠ではなく、地域都合や政治的駆け引きによって建設地が決まるのを避けたかった。
 そこで、県庁内のごく一部の職員だけに情報収集させた。その任務に携わった一人が勝部修・現一関市長(62)。3月25日、同市主催のILCセミナーで勝部市長は“水面下時代”の話に触れた。「『科学技術振興室』という部署にいたが、PRポスターを作ることも誰かに話すこともできずつらかった。別の事業構想を前面に出し、カムフラージュしたぐらいだ」
 セミナーに同席していた東北大学研究推進本部の吉岡正和客員教授は「一定の敷地に収まらないような規模の施設だし、国も認めていない。文部科学省も『勝手にそんな話を打ち出されては困る』という感じだった」と明かす。
 今はもう水面下の話ではない。ILC誘致への動きは日増しに活発化する。最新の情報では、海外候補地への立地の可能性が低くなっているといい、日本実現の期待がより一層高まっている。
 そんな状況を見つめながら増田さんは、日本がこれまで関わった国際プロジェクト推進方法に問題があると指摘する。
 「日本は、国民の合意形成を得られてから行政手続きを済ませ、その上で各国に参加意思表明をするスタイルを取ってきた。これは確実な方法だが、当然時間がかかり、『やります』と意思表示したときには、もう時間切れになっている」と増田さん。「国際交渉と国内対応を並行させて進める必要がある。そのためには前例主義に縛られずに、リーダーシップを発揮できる人材が必要だ」と強調する。
 建設資金については、「近年は単に利益の追求ではなく、社会的貢献に投資するという動きがある。国も地方自治体も財政は非常に厳しい状況にあり、公的負担は多少なりとも抑える必要がある」と、民間投資の活用を提唱する。
 ILCを通じ、自身にとって縁が深い東北、岩手を見つめ、考える場面が多くなった。増田さんは地域経済や雇用へのメリットとともに、子どもたちの育成に大きな期待を寄せる。
 「ILCにはノーベル賞クラスの頭脳を持った5000人規模の人たちが集結する。これらの頭脳と交流することで、地域の科学、文化、産業レベルが向上し、地方から世界に通用する人材を輩出できる。外国人研究者の家族との交流も、地元の若者が国際的な間隔を自然と養うことに結びつくだろう。ILC誘致に取り組むことで、こんな夢のようなことを具体的な設計図として描ける。実現に向け、候補地周辺の皆さんの支援を一層いただければ」と呼び掛けている。

写真=スイスの素粒子研究施設「CERN」を視察する増田寛也さん(日本創成会議事務局提供)
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