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有識者会議が指摘の諸課題  日本学術会議、ILC検討委の反応いかに

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tanko 2018-7-28 9:30
 日本学術会議(山極寿一会長)が26日、「国際リニアコライダー(ILC)計画の見直し案に関する検討委員会」の設置を決定した。文部科学省のILC有識者会議の取りまとめ文章では、ヒッグス粒子の精密測定に対する研究意義を認める一方、計画見直しにより打ち出された施設規模では、新粒子発見の可能性が低いことや、「トップクォーク」と呼ばれる素粒子の精密測定は実施できないとしている。検討委メンバーには物理以外の専門家や、同じ物理でもILCを推進する素粒子物理学とライバル関係にある分野を専門とする研究者もいる。有識者会議が指摘した課題などに検討委メンバーはどのような見解を示し、その内容に文科省や政府関係者はどう反応するか――。
(児玉直人)

 見直し案検討委のメンバーは8人。学術会議の3人の副会長や、学術分野ごとに設けている三つの部会からの推薦を受けて人選した。2015(平成27)年にノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章氏、2013年に設置されたILC検討委で委員長を務めた家泰弘氏も名を連ねている。8月10日の検討委初会合に先立ち、同8日に下部組織の技術検証分科会メンバーが集まり、協議を始める。
 委員の名称にもなっている「見直し案」とは、スイスとフランスの国境にある素粒子研究施設「CERN」の最新実験成果などを踏まえ、物質に質量を与えている素粒子「ヒッグス粒子」の生成に最適な施設規模(全長約20km)から運用を始める内容。段階的に施設を拡張していくこの見直し計画は「ステージング」とも呼ばれている。
 当初、全長約30kmで建設総額が約1兆円かかるとされていたILCだが、見直し計画を採用すれば、初期投資も当初より抑えられるメリットもある。
 一方で、未発見の新粒子を直接生成する可能性は低くなる。この点に対し、国内外の物理学者だけでなく、建設候補地の地元で活動する誘致関係者の一部からも「既に発見された粒子の後追い研究のような印象がある」「未知の世界に挑戦するぐらいのインパクトがある施設でなければ、ILCを建設する意味合いは薄れる」といった懸念の声がある。
 このほか、文科省有識者会議の取りまとめ文章では、国民や他分野の科学者界の理解を得る必要性なども指摘。今回結成された学術会議検討委は、ほとんどが他分野の研究者で占められていることから、有識者会議で洗い出された課題点を重く受け止め、ILC建設誘致のネックと指摘する声が相次ぐ可能性も否めない。
 素粒子物理学者の間では、ヨーロッパの次期素粒子計画の策定作業を考慮し、年内にも日本政府が何らかの意思を示す必要があるとしているが、今回設置された検討委の設置期限は来年7月25日までの約1年。学術会議事務局は、素粒子物理学者側の主張する動きと、設置期限との関係性は特になく「期限を超えない範囲であれば、早く終わる場合もある」としている。文科省からも「早期の審議」を求められているが、検討委内の議論の状況や参加委員の考え方、主張によっては時間をかけて審議を進める可能性も完全には否定できない。
 候補地の地元では、地域振興などへの効果も期待しながら熱意を見せる活動をしているが、一方でILCを建設する理由の根幹である「科学的意義」をおろそかにするわけにはいかない。ILC誘致を巡る議論は、まさに正念場を迎えている。


ILC見直し案検討委のメンバー
【検討委】
小林 伝司(大阪大副学長、哲学)
西條 辰義(高知工科大教授、経済学・環境学)
梶田 隆章(東京大教授、物理学)
田村 裕和(東北大院教授、物理学)
米田 雅子(慶応大特任教授、土木工学・建築学)
家 泰弘(日本学術振興会理事、物理学)
上坂 充(東京大院教授、総合工学・物理学)
杉山 直(名古屋大院教授、物理学)
永江 知文(京都大院教授、物理学)
平野 俊夫(量子科学技術研究機構理事長、基礎医学)

【分科会】
嘉門 雅史(京都大名誉教授、土木工学・建築学・環境学)
中静 透(総合地球環境学研究所特任教授、基礎生物学・環境学)
望月 常好(経済調査会理事長、土木工学・建築学)
田中 均(理化学研究所放射光科学総研副センター長、工学)
※検討委の西條辰義、米田雅子、家泰弘の3氏も分科会に加わる。
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