人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

ILC誘致年内に日本政府の判断なければ…… 中国加速器 建設へ現実味

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tanko 2018-7-7 14:00
鈴木氏(県立大学長 東北準備室長)が指摘

 東北ILC準備室室長を務める岩手県立大学の鈴木厚人学長(素粒子物理学)は6日、水沢佐倉河の市文化会館(Zホール)で講演し、ILC(国際リニアコライダー)の誘致に対する日本政府の意思表示が今年中に示されない場合、中国が計画している大型円形加速器の建設が現実のものになると指摘。「何としてもILCはやらなくてはいけない」と訴えた。

 講演会は一般財団法人国際経済政策調査会(本部東京都、高橋佑代表理事)と、いわてILC加速器科学推進会議(海鋒守代表幹事)が主催。市民ら約400人が聴講した。
 講演に先立ち、同推進会議の海鋒代表は「ヨーロッパの次期素粒子物理学計画にILCが盛り込まれないと、国際プロジェクトとして位置付けるのが困難となるばかりか、日本に対する信用や培ったブランドが大きく傷付く」と主張。「ILC100人委員会も立ち上がり、全国的な盛り上げを進めている。多くの人に理解してもらい、一層の盛り上げを図っていこう」とあいさつ。来賓の小沢昌記市長も「日本への誘致を確実なものにしなければいけない。いかに重要な施設か確認し、一人でも多くの人に発信してほしい」と訴えた。
 鈴木学長は、ILCの研究意義やこれまでの協議経過などを説明。「給電、給水、地下へのアクセスなどの設計はできている。あとは日本政府の判断を待つばかり」と述べた。仮に日本政府の判断が出なかった場合、中国が計画している大型円形加速器の建設が始まる可能性が高いと指摘した。
 このほか、誘致実現後の地域の在り方、特に外国人研究者やその家族の受け入れに関しては「国際交流協会だけではなく、住民も参加して多文化共生社会を築いていかなくてはいけない」とした。英語の重要性に注目が集まりがちだが、「英語圏以外の人たちもおり、英語が話せない外国人とのコミュニケーションを考えると、やはり『日本語』が大切。彼らが居住する町内が『日本語講座』の教室のような姿になれば」との考えを示した。
 また、居住地域など受け入れ環境の整備に関しては「広域的に分担して取り組まなければ、発展性がない」とした。
 講演終了後は、今年4月に映画監督の押井守氏が発起人となり発足した「ILC Supporters(サポーターズ)」の趣旨に賛同する宣言が読み上げられ、同サポーターズのロゴマークが印刷された紙を聴講者全員が掲げ、誘致実現への機運を高めた。
 ILCを巡っては、文部科学省のILC有識者会議が今月4日、研究の意義や課題点などを取りまとめた。今後は、日本学術会議(山極寿一会長)に審議が委ねられる見通しだ。

写真=市民ら400人を前にILC誘致への経過や研究意義について解説する鈴木厚人学長
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