人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

舞台は再び学術会議に(文科省ILC有識者会議、議論を取りまとめ終結)

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tanko 2018-7-5 16:10
 北上山地が有力候補地の素粒子実験施設、国際リニアコライダー(ILC)の国内誘致について協議してきた文部科学省の有識者会議(座長・平野真一名古屋大学名誉教授、委員14人)は4日、東京都千代田区の同省15階特別会議室で第11回会議を開き、科学的意義などこれまでの議論の取りまとめを実施。この日の会議が最終回と位置付けられ、2014(平成26)年5月に設置された同会議の役割はひとまず終了した。今後は文科省から再び日本学術会議(山極寿一会長)に審議が依頼される見通しだ。

 文科省は、2013年9月に学術会議から提出された「ILC計画に関する所見」を受け、より一層の調査・検討を行うため、同有識者会議を設置。科学的意義や投資効果などを協議する「素粒子原子核物理作業部会」や、ILCの技術設計報告書(TDR)を検証する「TDR検証作業部会」を設け、メリットや解決すべき課題を洗い出していた。
 当初は2、3年で取りまとめられるとみられていたが、議論が進む中で新たに検証すべき課題が浮上。さらに、ILCを推進する国際研究者組織が、物質に質量を与える「ヒッグス粒子」の精密測定に適した施設規模から段階的に拡張していく見直し計画を示したことで、一度役割を終えていた素粒子原子核物理とTDR検証の2作業部会を再設置した。結果的に、有識者会議設置から取りまとめまで、約4年の歳月が掛かった。
 これまでの議論では、科学的意義に一定の評価がある一方で、巨額投資による他学術分野への影響や、国民理解に対する懸念の声なども上がっていた。
 有識者会議事務局を務める文科省の素粒子・原子核研究推進室によると、同日の会議に提示された取りまとめ案に対し、委員からさまざまな意見が寄せられたという。「委員の皆さんのご意見を反映して報告書をまとめたい」としている。今後は、再び日本学術会議へ審議を依頼する見通しだ。
 文科省は2013年5月に、学術会議へILCの研究意義や国民や社会に対する意義などについて審議依頼をしている。学術会議内での議論を元に、文科省の有識者会議でも議論を深めた形だが、再び学術会議内でILC誘致に対する意見が交わされることになる。
 ILC計画を推進する研究者や誘致を切望する東北の自治体や経済団体などは、策定作業が始まるヨーロッパの次期素粒子計画にILC計画を反映させる必要があるとして、日本政府が今年中に前向きな意思表示をすべきだと主張している。
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