人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

【連載】ILC子ども科学相談室・28 太陽も死んじゃうの?

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tanko 2018-6-8 12:10
 国際リニアコライダー(ILC)は宇宙誕生の謎に迫る研究施設であることはよく分かりました。宇宙に誕生があるということは、いずれ「死」もあるということでしょうか? 毎日私たちを照らしてくれている太陽や夜の星にも寿命があるのでしょうか?

星には寿命があります

 星には自分で光っている星と、そうでない星があります。自分で光っている星を恒星と言い、太陽は地球に最も近い恒星です。夜空に見える数えきれないほどの輝く星も、ほとんどは太陽と同じ恒星です。
 では恒星はどのようにして生まれたのでしょうか。
 地球がある太陽系は、銀河系(天の川銀河)の中にあります。銀河系の中には2000億個の恒星があるといわれています。太陽はその中でも最もありふれた恒星の一つです。
 太陽は約46億年前に誕生したといわれています。寿命は100億年ぐらいだと考えられているので、あと50億年以上は光り輝いていると考えられます。
 太陽のような恒星は、どのようにして誕生したのでしょうか?
 恒星は、宇宙空間のガスやチリが集まり、それらが互いに引き合うようになり、分子雲というかたまりになります。分子雲の中にあるダストは、可視光(目で見える光)を吸収してしまうため黒く見えることから暗黒星雲と呼んでいます。
 集まったガスやダストはお互いに引き合う力(引力)が増し、さらに周りのチリやガスを取り込みはじめ、さらに大きくなり、やがて暗黒星雲は自らの重力で収縮し始め、内部は高温、高圧の状態になります。温度が約250万度ぐらいになると、水素の熱核融合反応(水素やヘリウムのような軽い元素が融合して、より重い別の元素になる反応)が始まります。ヘリウムが生まれると同時に巨大なエネルギーが生じます。この発生したエネルギーが内部の圧力を高め、自分自身の重力とつり合って、安定になります。このような姿が恒星です。
 恒星の寿命は、大まかにいって、質量の3〜4乗に反比例します。質量の大きな星は中心温度が高くなり、熱核融合反応が盛んに行われるため短時間で燃料となる水素などを消費してしまうため、寿命は短くなります。
 太陽についても、熱核融合反応で中心部の水素をほぼ使い果たすと、エネルギー源はなくなり、自分の重力で収縮し始めます。この時「重力エネルギー」が開放され、熱が生まれます。すると熱核融合反応が起こっている外側は、ますます加熱され、膨張し、重力による収縮を上回るようになってきます。
 その結果、太陽の外側は大きく膨らみ、表面温度は低下し、赤く見えるようになる「赤色巨星」と呼ばれる星となります。この時太陽は、金星の軌道くらいまで大きくなると考えられています。さらに時間が経つと、太陽はガスを放出しながら膨張と収縮を繰り返し、熱核融合反応も起こらない小さくて高密度の「白色矮星」になります。
 現在の太陽は、赤道半径が約69万6000km。重さ(質量)は地球の約33万倍です。太陽から地球までの平均距離は、約1億4960万kmあり、光の速度でさえ約8.3分かかります。表面温度は約6000度で、中心部は約1500万度と言われています。
(奥州宇宙遊学館館長・中東重雄)

番記者のつぶやき

 6月に入り、暑い日が増えてきました。しかし、東北地方はもうすぐ梅雨入りすると思われます。梅雨になると曇りや雨の日が多く、だんだんと太陽の光や青空が恋しくなるものです。
 私が小学生の時、ビートたけしさんが出演していたテレビ番組で、太陽系や宇宙のことを取り上げていました。そのとき見たのが、太陽がだんだん大きくなっていき、水星から金星を飲み込み、地球の公転軌道付近まで膨らむという話でした。何十億年も先の話で、自分は生きていないと分かっていながら「怖いなぁ」と思ってしまいました。
 先日、庭に天体望遠鏡を出し、木星や金星を眺めました。膨張してくる太陽のことなど気にせず、のんびり星を眺められる時代に生まれてきたのは、本当にラッキーだったのかもしれません。今、生きているこの瞬間を大切にしたいものです。(児玉直人)

写真=奥州宇宙遊学館では、特殊なレンズなどを使って撮影した現在の太陽の様子を見ることができる
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