人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

もどかしさ募るILC 動向注視し出前授業(市内小中学校)

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tanko 2018-6-6 9:40
 素粒子実験施設・国際リニアコライダー(ILC)の北上山地誘致実現を見据えた、市内小中学校でのILC出前授業。本年度は24校から申し出があり、既に一部の学校で実施した。ILC誘致に対する日本政府の出方に注目が集まる中、講師役の市職員やNPO法人関係者は、最新の動向も意識しながら授業に対応している。
 市は2014(平成26)年度から中学生、2015年度からは小学生を対象に出前授業を展開している。ILCは建設から運用開始まで10年から20年の歳月が必要。今の児童・生徒たちが大人になり地域社会の中核を担うころとの見方から、子ども向けの普及活動に力を入れている。
 小学校では、市ILC推進室の職員がDVD観賞やクイズを通じてILCの概要を解説。中学校では、市から委託を受けたNPO法人イーハトーブ宇宙実践センター(大江昌嗣理事長)の関係者が、素粒子物理の入門的知識や波及効果について説明している。
 これまで中学生4335人、小学生1681人が受講。本年度は中学校9校、小学校15校で5月下旬から順次行われている。これとは別に、県南広域振興局は遠野や北上などの中学校への出前授業を実施しており、同NPOに講師派遣を委託している。
 ILCは実現の是非に関する議論が進行中のプロジェクト。出前授業が始まった当初と現在とでは、計画内容も変わっている。昨年11月に国際研究者組織が了承した見直し計画では、施設規模を表す上で重要なキーワードとなる地下トンネルの長さなどが変わった。同NPO理事で奥州宇宙遊学館の中東重雄館長は「新聞などで最新の動向を注視しながら授業に対応している」と語る。
 最も悩ましいのが建設時期どころか、日本に誘致すること自体はっきりしていない点。中東館長は「建設時期などが明確になっていれば、子どもたちはより真剣にILC計画を受け止めるだろうが、現在のような協議検討中の状況において、ただ単に『盛り上がりましょう』だけでは現実味が乏しい」と捉えている。
 ILCを推進する研究者や誘致団体は、ヨーロッパの次期素粒子物理戦略計画の策定時期を踏まえ、年内にも日本政府から誘致に前向きな姿勢が示される必要があると強調している。一方で、政府が年内に姿勢を示すのは困難とみる有識者や政界関係者もいる。
 ILC誘致を巡る動きが正念場を迎えようとしている中、出前授業の予定は12月中旬まで組み込まれている。市ILC推進室の瀬川達雄室長は「動向に注視し、場合によって内容を変えることがあるかもしれないが、本年度の授業そのものは予定通り実施していきたい」としている。

写真=市内小中学校で本年度も始まったILC出前授業(市立水沢南小)
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