人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

ILC誘致 期待の一方… 政府判断時期に懸念(県民と県議、水沢で意見交換)

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tanko 2018-4-27 9:40
 北上山地が有力候補地となっている素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の実現に向けた取り組みをテーマとした、県民と県議会との意見交換会が26日、奥州市水沢大手町の奥州地区合同庁舎分庁舎3階大会議室で開かれた。出席した県民からは、誘致実現に対する期待感の一方、今年夏ごろとされる日本政府による誘致判断について、「現状では困難では」とスケジュール面に対する懸念の声もあった。

 ILC誘致に取り組む団体や候補地の地元住民ら8人が出席。県議会からは、座長の佐々木朋和氏をはじめ奥州選挙区選出の議員ら合わせて9人(うち1人はオブザーバー)が参加した。
 意見交換で、県立水沢高校理数科3年の生形優太君、千葉祐也君は「ILCが実現すれば、海外に行かなくても最先端の科学研究の仕事や関連する産業に携われる」などと期待を寄せた。
 候補地の地元ではILC誘致に熱意を持っている人たちが多いとの見方もある。しかし、候補地の近くに住む鈴木勝男さん(一関市大東町)は、「本当はあまり浸透していない。外国人の受け入れをどうするかというレベルの話にもなっておらず、来たらいいなと思う程度。誘致が決まれば別だろうが、講演会を3、4回やったところで話が盛り上がるものではない」と実態を語った。
 外国人市民で組織するILCサポート委員会のディーン・ルツラーさん(奥州市)は「不動産賃貸契約の手続き、銀行口座開設など、日本人にとっては不自由でないことでも、外国人にとってはハードルが高い」と、研究者ら家族がILC周辺で生活をスタートさせるためのサポートの必要性を訴えた。
 素粒子物理学者や誘致団体関係者の間では、ヨーロッパの次期科学計画策定のスケジュールなどから、夏ごろにはILCに対する日本政府の姿勢が示されなければ誘致実現は難しいとの見方がある。この点について、元東京理科大学教授の千葉順成さん(金ケ崎町)は、国際熱核融合実験炉(ITER)実現に要した年数を引き合いに、「ILCは現時点で国際的な費用分担の話など、明確になっていない部分がある。経験則からの話ではあるが、夏までに日本政府が決断するのは難しいだろう」との見解を示した。
 座長の佐々木議員は「受け入れ環境の整備や産学官連携、情報発信の不十分さなどさまざまな意見があった。これらの声を参考に私たちもさらに議論を深めていきたい」と述べた。

写真=ILC誘致実現をテーマに県議と意見を交わす参加者たち
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