人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

【連載】ILC子ども科学相談室・19 外国人がたくさん住んで大丈夫?

投稿者 : 
tanko 2018-3-9 10:40
 国際リニアコライダー(ILC)が完成したら、今まで以上に地域には多くの外国人が暮らしたり、訪れたりすると思います。異文化交流が盛んになると思いますが、逆に言葉の壁や考え方の違い、治安の面などの対策は大丈夫でしょうか?


偏見を持たないことが大切です
 ILCの建設や研究が始まると、日本国内はもちろん、海外から技術者や研究者とその家族たちが、年に1万人程度来日すると予想されています。来訪者の大部分は理系の方々だと思われます。
 研究とは直接関係がない芸術や文化に関心を寄せる人もいます。日本の茶道や剣術、日本建築や造園、琴や三味線など、日本の伝統文化に興味を持っている人も少なくありません。
 「日本に来る」「日本に来て研究をしたい」と思う人たちは、日本語や日本の生活や環境についても積極的に勉強しよう、覚えようと努力します。特に「言葉」については、日本語環境の中で実生活を行いながら経験を積み重ねるため、驚くべき進歩を遂げると思います。
 むしろ私たち日本人が共通語である英語で話すよりも、正しい日本語で話してくれる方が相手にとっては喜ばれるかも知れません。道路で外国の人に会ったら「こんにちは」と、まずは日本語で話しかけることが肝要です。
 ニヤニヤして何も声をかけなかったら、むしろ相手の外国人の方がびっくりし、恐怖を覚えるかもしれません。「英語がわからない、しゃべれない」ということで心配することはないと思います。お互いのことを一生懸命理解しようとする態度が重要なのです。
 一方で「物事の考え方」については、宗教的な考え方や国民性、その人が育った環境によって異なりますし、それが当たり前です。まずは相手の考え方、意見を尊重することです。
 もし、相手と自分との考え方ややり方が異なっていたら、「日本ではこのように考えますよ」「このような場合、日本ではこうします」というような慣例を話しましょう。いきなり「ダメだし」をして、相手を従わせる、無理強いするというようなやり方はいけません。
 「あなたの国ではそのようにするのですか? そのように考えるのですか?」というように相手の話をよく聞き、考え方を理解する努力を心掛けることが大切です。異文化交流とは、相手を知り、理解することなのです。
 治安についての質問もありました。どこの国においても犯罪者や治安を乱すような人はいます。「日本は治安が良い」とよく言われますが、ほぼ毎日、全国のどこかで何らかの犯罪行為、迷惑行為があります。ILCが来る来ないを問わず、安全で住みよい地域を目指すための取り組みは欠かせません。
 ILCの話題に触れる機会を利用し、世界中にはいろいろな考え方を持った人が大勢いることを考えたり、日本人の国民性を見つめ直したりするのもいいでしょう。世界を知る良い機会になると思います。
(中東重雄・奥州宇宙遊学館館長)

番記者のつぶやき
 奥州市や金ケ崎町には国際交流協会という組織があります。
 外国人と日本人との交流を促進するイベントを企画したり、海外にある姉妹都市や交流団体からの来訪者の受け入れ対応をしたりしています。日本人向けの外国語講座、外国人向けの日本語講座なども企画しています。
 奥州市国際交流協会では、ILC誘致を意識した取り組みをしており、医療通訳もその一つです。病気やけがを一刻も早く治したいと思うのは皆同じ。しかし、自分の症状を日本語で正確に伝えるのは、外国人にとって難しいことかもしれません。お医者さんや看護師さんの中には英会話ができる人がいるかもしれませんが、それ以外の言語も複数使いこなせるという人はなかなかいません。もし、言葉を間違って理解して治療したり、薬を出したりしたら大変なことになります。このほか、治療に対する考え方や医療保険制度も国によって異なります。しっかり研修を受けた通訳が間に入ることで、トラブルを防ぐことができます。
 医療分野に限らず、行政サービスや郵便、金融、警察・消防、交通などさまざまな場面で、言葉の壁を解消するのに必要な取り組みが今後重要視されてくることでしょう。
(児玉直人)

写真=外国人との会話を楽しむ金ケ崎町の児童たち=今年1月に開かれた「グローバル・キャラバン」
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