人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

ILCの研究者技術者 滞在できる環境を(地元企業参入へセミナー)

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tanko 2017-11-10 20:40
 北上山地が有力候補地となっている素粒子研究施設「国際リニアコライダー(ILC)」誘致を意識し、地元企業にILC関連産業への参入を考えてもらうセミナーが9日、江刺区内のホテルで開かれた。
 市と市ILC推進連絡会議が主催。市内企業や商工団体のほか、市議会議員や行政職員ら約100人が集まった。
 セミナーは2部構成。前半は、岩手大学・東北大学客員教授の吉岡正和氏が、ILCプロジェクトの現状と関連産業の参入に向けて講演した。
 冒頭、吉岡氏は重力波研究施設の立ち上げなどに貢献し、今年のノーベル物理学賞に輝いた米国のバリー・バリッシュ氏を紹介。バリッシュ氏は、米国の重力波観測施設「LIGO(ライゴ)」の研究責任者だった一方、ILCの技術設計報告書をまとめ上げる国際共同設計チームの最高責任者を務めた人物。受賞決定後にILC関係者に寄せられたメッセージには、ILCと同様、LIGOもコストや技術面で批判を受けたとしながら「必要なのは不屈の努力と忍耐、支援、そして少しの幸運だ」と記されていたといい、吉岡氏は「私たちも肝に銘じてやらなくては」と気を引き締めた。
 「ILCは、欧州合同原子核研究所(CERN、スイス)と車の両輪のように動くことで、新たな発見を目指している」と吉岡氏。「CERNには2500人が勤務し、うち2000人はハイレベルな技術者たち。彼らは定年後、近隣の企業や大学に入るケースが多い。ILCでも同じようなことが想定され、この地域の企業や大学に与える影響は素晴らしいものがある」と強調した。
 その上で「彼らが住みたいと思えるような環境を整える必要がある」と述べ、ILCの立地と地域活性化との関係性を考えていく必要性を訴えた。
 後半は、いわて産業振興センターの今健一・ILCコーディネーターが、いわて加速器関連産業研究会の取り組みについて紹介した。

写真=ILCと関連産業参入などについて講演する吉岡正和氏

日本のKAGRA「失敗」ではない(吉岡氏、本紙報道に見解)

 江刺区で開かれたILCセミナーで講師を務めた吉岡正和氏は講演の前段、本紙10月27日付に掲載されたドイツ・マインツ大学教授の斎藤武彦氏のインタビュー記事で、米国の重力波観測施設「LIGO」の成果がノーベル賞受賞につながり、「建設中の日本の重力波研究施設KAGRAにとっては敗北だ」とする趣旨の考えが述べられたことに対し、「失敗でもなんでもない」と指摘した。
 吉岡氏は「KAGRA(カグラ)は来年にも動きだす。今後、LIGOや世界中の重力波研究施設と連携し同時検出することで新たな発見が期待される、非常に楽しみな装置だ。重力波研究はILCと目的が共通するところがある」などとアピールした。
 斎藤氏は本紙インタビューで、ILCが当初計画よりも短い直線20kmの規模で建設を始めることにより、中国で計画されている素粒子実験施設や欧州のCERNの優位性が高まり、次々と新成果を出す可能性があると指摘。LIGOとKAGRAの間で起きたノーベル賞受賞のような「成果の差」が、ILCでも起きかねないと懸念していた。
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