人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

【連載】ILC子ども科学相談室・16 山の中に巨大都市ができるの?

投稿者 : 
tanko 2018-2-9 18:50
 国際リニアコライダー(ILC)が実現したら、大勢の外国人がこの地域に生活し、さまざまな施設もできるそうですね。ILCは北上山地にできるということは、山の中に外国人が暮らす巨大な都市ができるということですか?

施設近くは実験関連の建物が中心

 ILCの実現が決まった場合、建設技術者や研究者、その家族など年間1万人程度の外国人が来ると見込まれています。これは、スイス・ジュネーブにある欧州原子核研究機構(CERN)の実績に基づくものです。しかもこれらの人たちは、短期の来日ではなく、数年にわたる長期の滞在です。
 このため、ILCで行う研究や実験などに関する話し合いと並行して、外国人を含む関係者の受け入れに必要な環境整備、まちづくりについても、研究者ばかりでなく、行政や経済産業団体の関係者が話し合っています。もしILCが実現したらどんなまちになるのか、とても気になるところです。
 ILCは有力候補地である北上山地の地中にトンネルを掘って造ります。なので「山の中に巨大な研究所や研究者が造るまちができる」と思ってしまいそうですが、少し違います。
 まず、ILCの実験施設のほとんどは、地中のトンネルや大きな部屋の中に装置を置くので、地表からそれらの施設が見えるわけではありません。地中の実験施設へは、地上とをつなぐアクセストンネルを通って入っていくことになります。
 アクセストンネルは、検出器など巨大な実験装置を置く部屋がある中央部分(衝突地点)のほか、加速器を中心とした装置が設置される直線トンネルの途中数kmごとに造られる予定です。
 中央部分の出入り口付近には、素粒子の衝突現象を計測するのに必要な施設が集まる「実験サイト」になります。装置を動かしたり、修理をしたりする現場の拠点です。途中のアクセストンネルの出入り口近くには、加速空洞を冷やすための「液体ヘリウム」を製造する装置や電源など、関連する施設が設置される程度です。
 「実験サイト」からおよそ30〜40分ぐらいの範囲で移動できる場所に造られるのが、「メーンキャンパス」と呼ばれる中核施設です。参加研究機関や大学など約370機関の事務室や研究施設が集まる「ILC国際研究所」をはじめ、さまざまな情報を管理するコンピューターセンター、国際会議・研修施設、宿泊・飲食施設、サービス施設などが集まるエリアです。
 新幹線駅があり、研究者の皆さんの生活エリアを想定する平野部や市街地からも30〜40分ぐらいで到達できる場所を想定。つまり、実験サイトと市街地の中間地点にメーンキャンパスをつくることで、自宅やまちからの通勤も、実験施設にも行くのにもちょうどいいわけです。バス停やヘリポートなどの交通系施設など基幹となる重要な建物や施設も建設・整備されます。
 このほか、ILCに直接関連した技術、応用した技術などを活用し、新製品や新素材を生み出す研究拠点の整備も検討されています。
 このようにILCの本体のすぐそばには、実験に必要な施設や設備が、必要最小限の範囲で開発や建設されることになると思います。巨大なビルや建物を山の中につくって、都会のように開発をするというわけではありません。周辺の自然環境や、もともとそこに生活していた地域住民に極力影響を与えないようにすることが大切です。
(中東重雄・奥州宇宙遊学館館長)

番記者のつぶやき
 加速器を設置する直線トンネルの途中に造られる「アクセストンネル」と、ほぼ似たような役割を果たしている施設が奥州市前沢区や平泉町にあります。JR東北新幹線の一ノ関トンネルに設けられた「斜坑」という施設です。一ノ関トンネルは一関市舞川から前沢区生母字下沢田までの全長9730mに及ぶトンネルです。その途中に、地上へと通じるトンネルが2カ所あります。山肌から斜めに掘られている坑道(トンネル)なので「斜坑」と呼ばれています。
 長いトンネルを建設するとき、両端から掘ったり資材を運んだりしていると時間がかかるので、途中に横穴を掘って作業をすることがあります。完成後は、保守点検のための出入り口や緊急避難時の通路に使うことが可能です。
 周辺は有刺鉄線の付いたフェンスで囲われ、斜坑の扉も鍵のついた頑丈なものになっています。勝手に中に入ったり物を投げ入れたりすると、厳しく罰せられるので絶対にやめてください。
(児玉直人)

写真=JR東北新幹線・一ノ関トンネルの斜坑一つ「音羽斜坑」(奥州市前沢区生母地内)
トラックバックpingアドレス http://ilc.tankonews.jp/modules/d3blog/tb.php?684

当ホームページに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての著作権は胆江日日新聞社に帰属します。
〒023-0042 岩手県奥州市水沢柳町8 TEL:0197-24-2244 FAX:0197-24-1281

ページの先頭へ移動