人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

エネルギー活用で奥州注目(東北準備室が提案資料に盛り込む)

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tanko 2017-12-27 19:00
 北上山地が有力候補地となっている素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」実現を見据え、国内研究者や岩手、宮城両県の行政、経済界関係者らで組織する東北ILC準備室(室長・鈴木厚人岩手県立大学学長)は、ILCに水や電力を供給する拠点として、奥州市内にある既存施設を有効活用することなどを提言している。同準備室は、まちづくりや多文化共生など、市民生活にも結びつく事柄についても方向性をまとめ、順次公表していく予定。ILC実現へのヤマ場となる日本政府の判断のリミットが来年夏に迫る中、準備室関係者は政府が「ゴーサイン」を出すことに期待を込めながら作業に当たっている。

 東北ILC推進協議会の内部組織である同準備室は昨年6月に設置。岩手県立大学や東北大学、岩手大学、岩手・宮城両県、仙台市、岩手県ILC推進協議会の関係者らで構成している。
 ▽広報▽地域▽技術▽産業――の4部門と、地下施設、マスタープランの2専門部会を設け、地域の現状を反映させながら、ILC実現のために必要な情報を整理。地元提言の要素も加わった「ガイドラインシリーズ」と呼ばれる資料にまとめ、政府や地元関係者、国内外の研究者らがILCを具体化する際に活用してもらう。
 同準備室が今月開いた記者勉強会では、3種類のガイドラインシリーズや現在までの検討状況をまとめた資料が配布された。このうちILCで使用するエネルギーや水に関しては、東北電力水沢変電所=水沢区黒石町字下柳=や胆沢ダム、胆江広域水道(奥州金ケ崎行政事務組合管理)の給水管など、奥州市内にある既存施設の利用を掲げている。
 水沢変電所は、宮城県や秋田県の火力発電所などから275kVの超高電圧を受電している県南唯一の設備。ILC建設候補地からも近い。
 一方、加速器の熱を冷却するための水は、胆沢ダムからの調達を視野に入れる。同準備室は、広域水道給水管の末端にある江刺区の万松寺配水施設とフロンティアパーク配水施設から13km、水沢区と胆沢区境にある桜屋敷配水施設から15kmの給水管を新設し、ILCへ届ける方法を模索している。
 江刺の2配水施設を経由するとILCの北端部からの給水となる。桜屋敷からだと中心部への接続が可能だが、北上川を渡る形で給水管を設置する必要がある。
 装置冷却により温められた水は、農林水産業や建物の冷暖房などへ有効活用する。ただし、ILCからの排熱の多くは100度以下の“低品位”が多いことから、粘土系の熱吸収・排出素材「ハスクレイ」の活用を検討。ILC施設から離れた園芸施設などに熱を吸収した素材をトラック輸送することが可能で、国際研究施設と地元農業が結びつく姿を提案している。

写真上=水沢区黒石町の東北電力水沢変電所と胆沢区若柳の胆沢ダム(資料写真)
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