人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

中国の加速器整備計画予算急増(人材流出し、ILC国内誘致頓挫の恐れも)

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tanko 2017-12-23 11:20
 北上山地が有力候補地となっている素粒子研究施設「国際リニアコライダー(ILC)」の実現に向けた国内協議が進む中、中国国内ではILCのライバルとされる巨大円形加速器「CEPC(Circular Electron-Positoron Collider、円形電子・陽電子衝突型加速器)」を2020年ごろから建設する計画が進行中だ。ILC計画を推進する東京大学の山下了特任教授によると、ここ4年間でCEPC関連の技術開発に約100億円規模の予算が投じられている。中国側はCEPC開発と平行し、ILCへの参加も視野に予算措置をしているが、CEPC建設が現実のものとなれば、日本を含む世界中の科学者や技術者が中国に集中し、ILC計画は頓挫してしまう恐れが出てくるという。
(児玉直人)

 中国側の動向は、22日に東北ILC準備室が仙台市内で開いた報道機関向けの勉強会の中で示された。山下教授は、文部科学省の有識者会議でILC計画の議論が進められている状況を説明したのに併せ、中国国内で急激な科学技術分野の投資拡大が進められている現状を紹介した。
 ILCは約20kmから50kmの範囲で直線状に加速器を配置するが、CEPCは地下に円形のトンネルを掘り加速器を配置する。加速させ衝突させる粒子は、ILCもCEPCも電子と陽電子だ。
 円形加速器の代表例である欧州原子核合同研究機構(CERN)の大型ハドロン衝突加速器(LHC)は周長約27kmだが、CEPCは周長50〜70kmを予定している。周長が伸びるとカーブが緩やかになり、粒子を曲げた際に起きるエネルギーの喪失を抑えることができる。ILCは、ヒッグス粒子の研究に適した250ギガ電子ボルト(GeV)の重心系エネルギーが得られる全長約20kmの規模から運用を始める方針だが、CEPCも円形ながら同等のエネルギーを得られる。
 ILC実現のネックの一つは巨額な建設コスト。過去の国際プロジェクトの例などから、加速器本体のうちホスト国(建設地国)はおよそ半分、残りは国際分担する。これに対し、CEPC建設費について中国側は90%もの自国負担を提唱しているという。
 CEPCのほかにも中国では、周長100kmで350GeVのエネルギーを得る陽子同士の衝突型加速器「SppC(Super proton proton Collider)」を2035年以降に建設する事業も検討。放射性物質の低寿命化技術として注目される「核種変換(核変換)」や自由電子レーザー、放射光、重粒子などに関する研究拠点の整備も推進している。
 これら中国の科学技術分野への急激な投資拡大と、プロジェクトの増加の背景について、2020年以降も人員に余力があることや経済成長と人材育成の面で科学分野への投資が有効とされているためとの見方がある。山下教授は「ILCが実現できるよう、こちらも負けずにスピード感を持って努力している」としつつ、「一度中国の方に人が流れ込んでいけば、ILCの実現は困難になるだろう」との見解を示した。
 ILC実現へとつながる大きな鍵の一つとして、山下教授はILCを必要とする日本社会の声の高まりだと強調。「メディアなどを通じて、社会にILC計画の中身をしっかり説明していく必要がある」とした。
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