岩手県奥州市・金ケ崎町をエリアとした地域新聞社による国際リニアコライダー(ILC)関連記事を掲載。 奥州市東部の北上山地は、現時点における世界唯一のILC候補地に選定されました。当サイトにはILCをはじめ、理系分野やILCに関連性のある地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)についての記事を随時アップします。

【連載】ILC子ども科学相談室・9 ILCに対する心配について、どう向き合えばいいの?

投稿者 : 
tanko 2017-12-22 11:10
 世界に唯一の研究施設が来て、この地域が発展するのはうれしいけれど、自然環境や放射線の問題など、ILCを迎える上でなんとなく心配な要素がいくつかあります。このような心配事に私たちはどう向き合えばいいのでしょうか?


リスクと便益 両方をよく見つめましょう

 誰でもそうですが、私たちは何か行動するときに「損をしたくない」「危険な目にあいたくない」と思うものです。このような危険性や損をするような事柄を「リスク」と言います。
 世の中にはさまざまなリスクがたくさんあります。本当は誰でも安心して楽しく生活したいですが、残念ながらリスクをまったく受けずに暮らすのは困難です。それどころか、リスクを避けてばかりいると、別なリスクに直面してしまう可能性もあります。
 身近な例で考えてみましょう。
 道路が凍って滑りやすくなっています。ツルツルの道路で転ぶと、けがをしてしまう「リスク」があります。家から一歩も出なければ、凍った道で転ぶことはありません。しかし、それでは学校に行ったり、友だちと遊びに行ったりすることができなくなります。
 健康診断や骨折などのけがをしたときには、病院でエックス線検査(レントゲン)を受けます。しかし、エックス線は放射線の一種のため、放射線の被ばくというリスクがあります。放射線は浴びすぎると健康被害を受ける危険性があります。そのためか「放射線を絶対に浴びたくない」と考えてしまいがちです。でも、すぐに治療しなければいけない病気を見落としたり、骨折した場所が分からなかったりします。
 このように、リスクを考えるときは、必ず相反するプラスになる事柄「ベネフィット(便益)」を頭に描くことが大切です。つまり、リスクの影響をなるべく減らして、プラスになる事柄を得るということです。
 凍った道があったら、急がずゆっくり歩いたり、スパイクの付いた冬用のブーツを履いたりすれば、転ぶリスクは低下します。無事に学校に行けますし、友だちに会うこともできます。
 病院で行うエックス線検査は、専門知識のある医師や放射線技師が健康被害を起こさない範囲の放射線量を考え、検査を行います。検査をする部屋は、周囲に放射線が漏れない構造になっており、入り口には必ず「指示があるまで中に入らないでください」という注意書きも掲示してあります。患者さんは安心して検査に臨め、適切な治療を受けられます。
 リスクとベネフィットのどちらか一方だけを見てしまうと、総じて良い結果は得られません。決して感情的にならず、リスクをどれだけ減らすか、ベネフィットをどれだけ得るかをじっくり考え、最適な方法を生み出すことが最も大切です。
 スイスのジュネーブ近郊にある欧州原子核研究機構(CERN)は、ILCの大先輩のような加速器実験施設です。奥州市と同様、山に囲まれており、農地や田園風景が広がっています。加速器本体は地下に設置されており、地上の田園風景などはそのままです。
 研究者たちが集まるキャンパス周辺には、レストランや病院、会議室、宿舎などが集中していますが、周辺の田園風景とよく調和が取れており、違和感はありません。近くにはぶどう畑やプラタナスの並木があり、ジョギングコースにもなっています。
 ILCの建設に際しては、樹木を切ったり、自然に少し手を加えたりすることがあります。しかしCERNのように自然に調和した町づくりができれば、自然破壊というリスクは低減されると思われます。
 ILCが実現すると、経済効果や技術的進展、教育の振興、国際化など、大きな波及効果が期待されます。自然を大切にすると同時に、こうした効果を生み出していくことも、私たちが生きていく上では大事なことと思います。
(中東重雄・奥州宇宙遊学館館長)

番記者のつぶやき

 先日、市内の高校生の皆さんが奥州市のまちづくりについて語り合う意見交換会が水沢区でありました。その中では、奥州市という古里は自然がたくさんあって大好きだが、レジャー施設が少なく交通の便も悪い、就職先も少ないという声がありました。どうやら自然の少なさは我慢してでも、やりたい仕事ができて、楽しい店や施設がたくさん集まる都会に行ってみたいという思いが強いようです。リスクとベネフィット、どちらをどれくらい重視するかの感覚は、人それぞれ違います。それゆえに、どのように折り合いをつけるかが非常に悩ましいところですね。
(児玉直人)
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