人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

ILC本体、段階的建設方針で奥州市域に当面届かずとも  共に歩む姿勢「不変」

投稿者 : 
tanko 2017-11-15 12:20
 素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」計画を巡り、研究者による国際組織は今月「ステージング」と呼ばれる段階的な建設方針を了承した。新方針に準じて北上山地に建設した場合、一関市東部に施設全体が収まり、奥州市内にILC本体は当面造られないことが予想される。とはいえ、ILC本体のみで国際研究都市が成り立つわけではなく、居住地域や教育設備などさまざまな機能を周辺に配置しなくてはならない。奥州市の誘致関係者は「市域に入るか否かによって、ILCと共に歩む姿勢が変わるものではない」と強調。日本政府の国内誘致判断が来年に迫るとされる中、国際研究施設を迎え入れるにふさわしい都市づくりをより具体的に検討していく必要性を訴える。
(児玉直人)

 「ステージング」は、素粒子の衝突現象を捉える検出器を中心に、両端へ直線10km、全長約20kmによる規模で実験をスタートさせ、段階的に施設規模(全長距離)を拡張していく手法。当初は全長約30kmでの始動を想定し、将来的に約50kmまで伸ばす構想を描いていたが、始動時の規模を一段階短く設定することで、約1兆円とされる初期投資コストの抑制を図る狙いがある。
 ILCの具体的な建設場所や施設の配置場所については正式に公表されていない。日本政府に至っては北上山地を候補地と認めているわけでもないが、本紙はこれまで研究者らが示してきた諸資料などを基に、ステージングで示された全長20kmの施設規模を推測した。
 すると、南端は一関市の室根山付近、北端は阿原山南側の一関市大東町鳥海地区という姿が浮かび上がった。ちなみに全長約30kmに拡張されると、北端部は江刺区伊手の中心部南側、同50kmだと市立人首小学校の北西にまで達する。
 阿原山からほど近い江刺区の伊手地区センター。2013(平成25)年に、ILCに携わる国内外の研究者らが視察に訪れたことがある。地質調査等に伴う地元向けの説明会では、「ぜひ実現を」という住民の期待感が漂った。
 境田洋春センター長は「伊手地区の地下にILCができるという大きな期待がある」と語る。地上からは見えない地下に造る実験施設とはいえ、世界最先端の研究が「わが地元」で行われているという誇りは、ある意味で地域住民の力にもなり得る。
 「ソフト面に気持ちの高まりをシフトして、地域の子どもたちの将来にILCをどう生かせるか、地域として何ができるか、みんなで考えていかなくてはいけない。そのためにも、政府が早く誘致を判断してほしい」と願う。
 来年3月で任期満了を迎える市議会。ILC特別委員会の渡辺忠委員長は、ステージング方針を踏まえ議会としての協議や国への要望活動の実施を検討している。「一番良くないのは『奥州市にILCが届かなかったから、これで終わり』という雰囲気になり、受け入れやまちづくりに対するトーンが下がってしまうこと」と警戒。「研究者の住環境や関連企業の受け入れなど、周辺部が果たすべき役割、市民や地元企業が活躍できる場を形成しなくてはいけない」と訴える。

図=ILCの建設想定エリア
トラックバックpingアドレス http://ilc.tankonews.jp/modules/d3blog/tb.php/646

当ホームページに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての著作権は胆江日日新聞社に帰属します。
〒023-0042 岩手県奥州市水沢柳町8 TEL:0197-24-2244 FAX:0197-24-1281

ページの先頭へ移動