人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

【連載】ILC子ども科学相談室3 Q:なぜ加速器を使って宇宙を調べられるの?

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tanko 2017-10-27 16:20
 宇宙誕生の謎を探るには、「加速器」というものを使い、宇宙誕生時と同じような状態を再現する実験をすればよいということでした。なぜ、その実験で宇宙誕生の謎がわかるんですか?

A:宇宙誕生時の状況を再現できるからです

 加速器は、目には見えない小さな粒子を電気の力で加速、つまりスピードを与えてあげる装置です。そのスピードは、光の速さ(秒速約30万km)に近い状態です。
 粒と粒をぶつけるという一見単純な実験で、なぜ宇宙誕生という壮大な謎に迫ることができるのか。現在の宇宙は、小さな点のような空間から始まったと言われています。その点が爆発して膨大なエネルギーが放出されます。そのエネルギーから小さな粒「素粒子」が生まれました。
 膨大なエネルギーを放出した大爆発は、「ビッグバン」と言われる現象です。この爆発によって、宇宙は急激に大きくなりました。最近はさらに加速して広がり続けているそうです。
 エネルギーから素粒子が生まれる現象を裏付ける式が、世界的に知られる物理学者アインシュタインが考えた「E=mc^2」です。これは、エネルギー(E)と質量(m)は等しいと言っているのです。cは光の速さで変化することはありません。高エネルギーの状態から重い素粒子ができることを表しています。
 加速器を使って、粒子と粒子をぶつけることでも、大きなエネルギーが生じます。粒子の速さが、光の速さに近いほどエネルギーは大きくなり、宇宙誕生時の状況を再現していることになります。
 加速器を使ってエネルギーが高い状態を再現すれば、今まで見つけられなかった重い素粒子を作り出せる可能性があります。その重い粒子を調べれば、宇宙誕生の謎がまた一つ解き明かされることになります。
 計画中のILCでは、電子、陽電子という2種類の素粒子を衝突させることによって、出てきた粒子を調べやすくしています。
(中東重雄・奥州宇宙遊学館館長)

“番記者”のつぶやき
 食欲の秋です。皆さんはおいしい料理を食べる時に、「これは一体どんな材料を使って作ったのかな」と気になる時があるかもしれません。その疑問を持つ感覚は、宇宙誕生の謎を探る時とおそらく同じようなものだと思います。果てしなく広がる宇宙が何でできているのかを調べていくと、目には見えない小さな複数種類の粒「素粒子」が共通の材料になっているというのが、現在の科学の考えです。大きな宇宙を知る手掛かりは、スケールが真逆の小さな素粒子にあるのです。
(児玉直人)

写真=茨城県の高エネルギー加速器研究機構で開発実験中のILC用加速器側の円筒状の装置)
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