人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

ILC建設候補地「北上山地」選定から4年 推移見守る地元自治体

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tanko 2017-8-24 14:40
 素粒子物理学の国際研究施設「国際リニアコライダー」(ILC)の建設候補地に、北上山地が選ばれてから4年が経過。この間、まちづくりビジョンの策定やILC関連産業への参入セミナー開催、多文化共生社会形成に向けた事業など、多岐にわたる取り組みが進められてきた。ここ1年が誘致実現に向けた正念場と位置付けられているが、重要な協議は国際研究者組織や文部科学省の有識者会議の場で行われている。これら議論の舞台に直接参加ができない奥州市など地元自治体や地域の誘致関係者は、出前授業やPR活動などを地道に進めながら推移を見守っている状況だ。
(児玉直人)

 ILCは、物質の成り立ちや宇宙誕生の謎に迫るため、世界で唯一建設する国際研究施設。これまで示されているスケジュールから推定すると、2020年代後半から2030年代前半の運用開始が見込まれる。
 日本の研究者らによる「ILC立地評価会議」は、2013(平成25)年8月23日、北上山地を国内候補地とする評価結果を公表。政府機関ではなく「研究者による判断」ではあるが、事実上、世界でただ一つの候補地に選ばれた。
 現在、文科省のILCに関する有識者会議が、日本誘致を実現する上で解決すべき諸課題を検証している。
 研究者界では、今月9日に中国の広州市で開かれた国際将来加速器委員会(ICFA)とリニアコライダー国際推進委員会(LCB)の会議で、当初計画よりも小さな規模から段階的に整備、運用していく「ステージング」について協議した。
 本県や東北の誘致関係者らの間では、広州市での会議をもってステージングが承認されると見込んでいた。ところが実際には「支持」の段階で、11月にカナダで開かれるICFAの会合で正式表明する流れになった。
 このため、今月中に予定していた東北ILC準備室による地元受け入れ態勢の方針や、岩手県ILC推進協議会によるILC経済波及効果の公表は、11月のICFA会合後になる見通しとなった。両団体の担当者は「ステージングで示される中身は、協議してきた内容とどうしても結びつきがある。正式な承認を待ってからにしたい」と口をそろえる。
 文科省の有識者会議も、ステージングの正式表明を待ち、次の動きを取るという。同会議事務局を務める文科省素粒子・原子核研究推進室の担当者は、「今までの検証や議論の前提となっていた条件が変わるかもしれない。今後の協議の方向性や次の会議の日程を決めるにも、11月のICFAの結果を受けてからでないと判断できない」としている。
 ILC計画を巡る核心部分の動きは、海外や中央を舞台に行われており、候補地の地元自治体や誘致団体はその推移を見守るしかないが、PR活動など可能な範囲での取り組みに力を注ぐ。東北ILC推進協などは、9月に横浜市内で開かれる真空技術分野のビジネスイベント「真空展」会場内にPRブースを設置。特別講演も予定している。
 奥州市でも、出前授業やイベント会場でのPRを通じたILCの普及啓発を引き続き実施。ILC推進室の千田良和室長は「地元としてできることをしっかり進めながら、国や研究者界の動きを見ていきたい」と話している。

写真=奥州市役所本庁に掲げられたILC誘致実現を呼び掛ける横断幕。北上山地が事実上「世界唯一の候補地」に選ばれてから4年が経過した
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