人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

目指すは「ご当地物理学者」  沓沢拓さん(21)

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tanko 2017-8-13 10:30
 幼いころ、父親に連れられ北上川に架かる藤橋の近くで満天の星空を眺めていた。「こうした体験の影響も少なからずあって、宇宙や自然科学に興味を持つようになった」。
 きれいな星空に加え、国立天文台水沢VLBI観測所も身近にある。宇宙大好き少年が育つには申し分のない環境だ。
 小学生の時は宇宙少年団水沢Z分団で活動。中学時代は市の科学研修で茨城県つくば市を訪問した。一関高専1年生だった5年前は、同観測所の電波望遠鏡を使い、天体観測を体験する「Z星研究調査隊」に参加。新天体を発見する貴重な経験もした。「星の動きを知るには物理を学ばなければ」と思い立ち、今年4月、東京理科大学理学部物理学科の3年生に編入学した。
 大学に通い始めた直後、書店で巨大ブラックホールに関する一冊の本を何げなく手にした。「面白い本だなあ。一体誰が書いたんだろう……」。筆者のプロフィルを見たのは、一通り読み終わってからだった。
 〈現在、国立天文台水沢VLBI観測所教授〉
 「マジかっ!」。なじみある観測所の名前が目に飛び込んできて思わず驚いた。筆者は同観測所長でもある本間希樹氏。「本間先生の研究に触れるにはどうしたらいいか」。いろいろ探して見つけたのが、水沢観測所も実施会場となる総合研究大学院大学のサマースチューデントプログラムだった。
 今月30日まで郷里に滞在。期間中、かつて参加した「Z星」も開催され、高校生たちに5年前の自分の姿を重ねた。「この中から、研究者が出てくれたら」と期待する。
 理論物理学者を目指しているといい、やはり気になるのが、北上山地への誘致が期待されている国際リニアコライダー(ILC)。ILCは素粒子物理学の研究施設だが「決して素粒子の世界だけにとどまらず、天文学などあらゆる分野に結びついていると思う。『自分はこれだけやればいい』というようではいけない」と、垣根にとらわれない幅広い視点を持つことの大切さを強調する。
 「宇宙のこともやりたいし、ILCが実現したらそっちも携わってみたい」と胸の内を明かしながら、生まれ育った奥州の地で研究活動ができる日が来ることを夢見る。「ご当地アイドルならぬ“ご当地物理学者”になってみたい」
(児玉直人)

 星空を見て育っただけに「明るすぎる東京の夜空は、ちょっとストレス」。今月19日に、同天文台で開催される「いわて銀河フェスタ」でも会場案内などに携わるという。「関係者だけで盛り上がるのではなく、一般市民の皆さんが気軽に訪れ、自然科学の世界を楽しむ雰囲気はとてもいい。同期の仲間にも見てもらいたい」と語る。実家は水沢区姉体町字水ノ口前。
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