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市民運動で「解体」から一転「保存」 守った水沢の象徴(取り壊し寸前だった旧緯度観測所本館)

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tanko 2017-7-22 10:30
 取り壊し目前だった建物が、国が認める文化財へ――。国の有形文化財に登録される見通しとなった、国立天文台水沢キャンパス内の建造物4棟の一つ、旧緯度観測所本館(2代目本館)は「奥州宇宙遊学館」として、楽しみながら自然科学を学ぶ拠点として大きく生まれ変わった。「天文台がある水沢にしかない建物。保存だけでなく、活用しなければ意味がない」。今から12年前、保存活用の市民運動の先頭に立った一人、イーハトーブ宇宙実践センター副理事長の佐藤一晶(さとう かずあき)さん(67)は当時の様子を振り返りながら、天文台側と連携したさらなる有効な活用の必要性を提唱する。
(児玉直人)

 金環日食を興味深げに眺める大勢の市民、実験を楽しむ子どもたち、現役の天文学者の話を真剣な表情で聞く高校生、科学談議に花を咲かせる老若男女――。
 2代目本館を保存活用し2008(平成20)年に開館した宇宙遊学館では、こうした光景が当たり前のように広がる。だが、取り壊しが計画通り進んでいたら、この「当たり前」は存在しなかった。
 「旧水沢緯度観測所本館 来年2月取り壊し 築80年、老朽化著しく」
 2005年11月22日付の本紙にこんな見出しが躍った。文部科学省は2005年10月までに2代目本館の取り壊し予算を計上していた。これに呼応した形で、旧水沢市は装飾に特徴がある玄関や階段手すり、窓ガラスなどの一部部材を保管する補正予算の議決を得る段取りをしていた。
 水沢区内で料亭などを営む経営者でもある佐藤さん。天文台への個人的な思い入れもあるが、木村栄初代所長が発見した「Z項」にちなんで「Zのまち」を掲げていながら、取り壊しへの道を進む状況を看過できなかった。市民運動組織を立ち上げ、保存活用を訴えた。
 当時の市や天文台の担当者からは「無理だからやめなさい」とまで言われ、視線も冷たかった。それでも粘り強く運動を展開した。
 天文台OBの大江昌嗣(おおえ まさつぐ)さん(76)を中心に立ち上げた「イーハトーブ宇宙実践センター」をはじめ、知人経営者らの支えもあり、保存への機運は盛り上がりをみせた。宮沢賢治が通った建物とあって、全国の賢治ファンが関心を寄せたのも大きかった。1000万円もの寄付をしてきた人もいた。結果的に議会や市、天文台を動かすことになり、保存活用へと流れが変わった。
 市民運動が実を結び、宇宙遊学館が誕生する。NPO法人格を取得した同センターが指定管理者となり、それまで近寄りがたい存在だった天文台は、誰もが気軽に科学の世界に触れて学べる場所となった。
 佐藤さんは「県南に科学に触れる施設がなかったことも、保存活用する上で大きなポイントとなった。気軽に足を運びやすくなったとはいえ、まだ来たことがないという市民はたくさんいる。天文台とも協力しながらさらなる活用策を考えていきたい」。同天文台水沢VLBI観測所の亀谷收(かめや おさむ)助教(60)も「臨時緯度観測所時代から数え、間もなく120周年になる。過去の研究から現在の研究まで、私たちの活動の一端を少しでも伝えご理解いただけるよう、遊学館とのタイアップをいろいろやっていきたい」と話す。

写真=取り壊しの危機から、奥州宇宙遊学館に生まれ変わった2代目本館と佐藤一晶さん
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