人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

国内誘致政府判断 リミットは来年8月(鈴木・東北準備室室長が強調)

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tanko 2017-7-7 9:30
 江刺区東部を含む北上山地が候補地となっている「国際リニアコライダー(ILC)」について、東北ILC準備室の鈴木厚人室長(岩手県立大学長)は6日、ヨーロッパの科学計画策定などの動向を踏まえ「来年8月までに日本政府の誘致判断が出なければいけない」と強調した。同室では、地元の受け入れ態勢が万全であることを国内外に示すための協議が大詰め。今年8月には、中国で開催される研究者組織の会議でILCの新しい建設方針に対する協議が行われるほか、岩手県ILC推進協議会(谷村邦久会長)は集約作業中のILC経済波及効果の公表を予定している。鈴木室長は、政府からゴーサインを引き出すためにも「最大限の努力をしていきたい」と話している。
(児玉直人)


 同準備室は、東北ILC推進協議会(事務局・東北経済連合会=東経連)の下部組織として昨年8月に設置された。岩手県立大や東北大、岩手大、岩手・宮城両県、仙台市、岩手県ILC推進協、東経連の関係者らで構成しており、▽広報▽地域▽技術▽産業――の4部門と地下施設、マスタープランの2専門部会が、具体的な受け入れ態勢の準備を進めている。
 鈴木室長は6日に仙台市内で開かれた記者懇談会で、各部門の協議状況のほか、今後の流れやILCの日本誘致を取り巻く現状について説明した。
 直近の動きとして注目されるのが、8月9日に中国広州市で開かれる「国際将来加速器委員会(ICFA(イクファ))」の会議。ILCの建設規模を段階的に拡大していく「ステージング」と呼ばれる手法がILCを推進する国際研究者組織「リニアコライダー・コラボレーション(LCC)」より提案され、正式承認を求める。
 ステージングは、昨年12月に盛岡市で開かれた国際会議「リニアコライダー・ワークショップ(LCWS)2016」で提案された。当初計画より約10km短い直線距離20kmのトンネルを掘り建設することで初期に生じる膨大なコストを抑え、実験状況を見ながら段階的に施設規模を拡大していく手法だ。
 鈴木室長は「ICFAの承認を受けて、来年度の政府予算概算要求に向けた仕込みをしたい。現在は日米の政府間協議が実現しているが、今度は日欧の協議が進むよう環境を整えたい」と述べた。
 質疑の中で鈴木室長は、誘致実現に向けた日本政府の判断時期について来年8月がリミットになると強調した。根拠となるのがヨーロッパにおける科学計画の策定時期で、「ヨーロッパが次の5カ年計画を出すのが来年8月。それまでに日本がILCを誘致する決断をしないといけない」と指摘。ヨーロッパ側がしびれを切らしてしまえば、国際協力なしに実現できないILCは事実上、頓挫してしまう可能性もある。
 鈴木室長は「さまざまな政情もあるが、ゴーサインを引き出せるよう(日本政府に)求めていかなくてはいけない。地元や日本国内、そして世界の状況をしっかり示し、なるべく早く決断が出せるよう、どんどん訴える努力をしていきたい」と力を込めた。

写真=ILCをめぐる現状を説明する鈴木厚人室長
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