人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

加速器製造設備や運用 地元企業の参入促す(胆江で初、技術セミナー)

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tanko 2017-5-25 9:30
 北上山地が有力候補地の素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」への地元企業参入を促進する、ILC技術セミナーが24日、奥州市水沢区佐倉河の市文化会館(Zホール)で開かれた。胆江地区では初の開催。ILCを建設し、運用する上で必要な技術について、参加者は自社の技術と照らし合わせながら情報を収集した。

 東北ILC準備室(室長・鈴木厚人県立大学長)と、いわて加速器関連産業研究会(会長・藤代博之岩手大理工学部教授)が主催。岩手県や奥州市などが共催した。会場のZホール展示室には、製造系企業の関係者ら90人余りが詰め掛けた。
 同セミナーは昨年度まで一関市や北上市、滝沢市で開催。5回目となる今回は、初めて胆江地区での開催となった。
 冒頭、県の大平尚企画理事は「加速器装置を段階的に拡張することで、初期投資コストを抑制するアイデアが示された。日米の担当者レベルの議論が始まっているほか、ヨーロッパでは次期加速器研究計画の検討に入ろうとしており、そこにILCを書き込むかどうかという状況。総じてまさに今年が正念場。実現を見据え、加速器空洞の製造に限らず多様な技術が必要で、ぜひ多くの方々に参加してほしい」とあいさつした。
 同日は、ILCの最重要部品となる加速器空洞の内部を研磨する技術と、空洞を組み立てる際などにほこりの侵入を防ぐために必要な「クリーンルーム」の技術について取り上げた。ILCの国内研究母体となっている茨城県つくば市の高エネルギー加速器研究機構(KEK)の専門家2人が講演したほか、岩手県立大客員教授も務めるKEKの早野仁司教授が概要を解説した。
 電子や陽電子がほぼ光の速さで駆け抜ける加速器空洞は、溶接面の段差や突起を無くすため、電解研磨の技法で内部表面を滑らかに仕上げていく。さらに、空洞内部にほこりが入らないよう、空洞の取り付けや接続作業はクリーンルームで行われるという。
 早野教授は「連結前に接続面をふさいでいたカバーのねじを外す場面も含め、クリーンルーム内で行われる作業は細心の注意が必要。加速器を組み立てる工程の中では、クリーンルームの重要度は非常に大きい」と強調した。

写真=ILCの建設や運用を支える上で欠かせない技術や設備に関する説明に耳を傾けるセミナー参加者たち
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